♪ Daral Shaga
作曲:Kris Defoort(ドフォールト1959~)
内容:命がけで国境を乗り越える現在の深刻な移民問題を、フランス人作家Laurent Gaudé(1972~)の台本で、ベルギー人現代作曲家がオペラにして問いかける。3人の歌手、ピアノ、チェロ、クラリネットの3人の演奏家、コーラス、5人のアクロバットとヴィデオを屈指した、オペラの中に、アクロバットによるサーカスの要素を取り込んだ作品。
フランス語
あらすじ:
若い娘ナドラ(メゾソプラノ)とその父(バス・コントラテノール)が、国境を超えて移住するために身分証明書を焼いて2度と故国に戻らない準備をし、持てない物については記憶だけを連れてゆこうと、永遠の別れを告げている。その遠くでは、既に国境を越えた亡命者(バリトン)が、彼が見た西洋の街を描写する。
父は自分の衰弱のせいで、娘ナドラについて行けなくなるのではと心配するが、ナドラは父を励ます。その時、亡命者は 突然車のライトが近づいてくるのを見、車になぎ倒される。
ナドラと父は、疲労困憊(ひろうこんぱい)にもかかわらず、苦しみの無い理想郷への希望を捨てずに、国境への道を歩み続ける。車に轢かれた亡命者が立ち上がり、彼は、自分が亡命先でも自分の故郷でもない場所にいるように感じる。ナドラの父は、一緒に歩く娘がより幸せな未来に向かっているのを見て、幸福感に包まれる。事故後「影」となった亡命者は、今や世界中のどこにでも簡単に自由に移動できる。
国境の壁の前で大勢が諦めざるを得ない中、父はナドラに「まずお前が先に金網を乗り越えろ」と頼む。「影」となった亡命者は、壁を越えようとする同胞たちを見守り、父と他の移民たちに励まされてナドラが壁に向かって突進するのを見守る。ナドラはついに壁を乗り越え、振り返るが、父が自分の後に続くことを完全に諦めて国境の反対側に残ることに気づく。
亡命者は、以前彼自身が金網を乗り越えた時、1人の男が自分に助けを求めたが自分は知らないふりをしたことを思い出す。彼は助けを黙殺した、その時に既に死んでいたのだ。
ナドラの父は、故国の土地、壁を乗り越えた移民たちが置き残した物の中にいる。その父に亡命者は、「Daral Shaga」(死なない男)と言う名前を与え、幕となる。