♪ Frankenstein「フランケンシュタイン」世界初演
作曲:Mark Grey(グレイ1967~)
内容:イギリスの女流作家メアリー・シェリー(1797-1851)の、映画などにもなった有名な«ゴシック小説»の最高傑作『フランケンシュタイン・あるいは現代のプロメテウス』(1818)が原作。Júlia Canosa i Serraが台本を書き、アメリカ人現代作曲家でサウンドデザイナーのGreyがモネ劇場の委嘱で作曲したオペラの世界初演。
2幕 英語
原作のあらすじ:
小説では、英国北極探検隊の隊長ウォルトン(バリトン)が、姉に書き送った手紙という形式をとっている。ウォルトンは北極点に向かう途中で、氷上で衰弱したヨーロッパ人男性を見つけ、彼を救出する。彼はヴィクター・フランケンシュタインと名乗り、ウォルトン隊長に自らの異常な身の上話しを語り始める。
スイスのジュネーヴの名門の家の長男として生まれたフランケンシュタイン(バリトン)は、子供のときから何一つ不自由なく、両親の愛情の下に平和に育てられた。子供の頃、両親と一緒にイタリアに旅行した時、貧しい農民の家を訪れ、そこで養われている可愛い少女に会う。彼女は、ミラノの貴族の娘だが、母親が彼女を生み落とすと死に、貴族の家も没落して、とうとう貧しい農民に養われていた。フランケンシュタインの父母は同情してその少女、エリザベト(メゾソプラノ)を引きとり、養女として、わが子同然に育てたので、フランケンシュタインも 彼女を実の妹のように思って成長した。彼女は姿形が美しいだけでなく気だても良く、誰からも愛されて成長し、両親はいつか彼女を彼の妻にしたいと考え、フランケンシュタインも彼女を愛するようになっていた。フランケンシュタインは、科学者を志し故郷を離れてドイツで 自然科学を学んでいたが、ある時から、生命の謎を解き明かし自在に操りたいという野心にとりつかれる。そして、狂気に近い研究の末、《理想の人間》の設計図を完成させ、それが神に背く行為であると自覚しながらも、墓から人間の死体を手に入れ、それをつなぎ合わせて怪物の創造に成功した。
誕生した怪物(The Creatureメゾソプラノ)は、優れた体力と人間の心、そして知性を持ち合わせていたが、言葉にできないほど容貌が醜いものとなった。そのあまりの醜悪さにフランケンシュタインは絶望し、怪物を残したまま故郷のスイスへと逃亡する。しかし、怪物は強靭な肉体のために生き延び、野山を越え、言語も習得して、スイスの彼の元へたどり着くが、彼の弟を殺害する。責任を感じたフランケンシュタインは、怪物と会う。怪物は、「人間と付き合いたい、愛されたいと願っていたが、醜悪な姿のために、出会う人間のすべてから憎まれ、攻撃され続けてきた。孤独と絶望から、自分を創造したフランケンシュタインを怨み、復讐を誓って、その手始めにお前の弟を殺した」と告白する。そして、孤独の中の自己の存在に悩むこの愛に飢えた怪物は、フランケンシュタインに 自分の伴侶となり得る異性の怪物を1人造るように要求する。怪物はこの願いを叶えてくれれば2度と人前に現れないと約束するが、さらなる怪物の増加を恐れたフランケンシュタインはこれを拒否する。自分の創造主たるフランケンシュタインに絶望した怪物は、復讐のため彼の友人や妻を次々と殺害する。憎悪にかられるフランケンシュタインは怪物を破壊するために追跡し、北極海まで来たが流氷に取り残されて衰弱し、ウォルトンの船に救出される。
ウォルトンが、フランケンシュタインの船室に入ると、怪物が彼の上にのしかかり、すでにフランケンシュタインは冷たくなっていた。怪物は、恐怖で身動き出来ない船長に向かって、「これでおれの仕事は終わった。おれはこれから北極に向かって、そこを墓場とする。おれをこの世に生み出した男は死んだ。おれも死ねば、おれたち2人についての記憶もすぐに消えることだろう」と言って姿を消す。怪物のその後は誰も知らない。