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♪ Il Trovatore「イル・トロヴァトーレ(吟遊詩人)」

by hidepost, le 2 avr 2012

作曲:Giuseppe Verdi(ヴェルディ1813~1901)

内容:迫害されたジプシーの領主への復讐劇で、スペインの劇作家A. G. Gutiérrezの同名の戯曲を基に、S. Cammaranoが台本を書いた。イタリアオペラの伝統である旋律と声の饗宴で、イタリアオペラの醍醐味満点の作曲家ヴェルディ中期の傑作。

4幕 イタリア語

あらすじ

第1幕 第1場

スペイン、アラゴンのルーナ伯爵の城で、夜、隊長フェルランド(バス)が、警護の衛兵たちに伯爵家にまつわる不気味な話を聞かせる。「昔、先代の伯爵には2人の息子があり、兄は今の伯爵だが、ある時ジプシーの老婆が弟を呪い殺そうとした疑いで火あぶりの刑にされた。その時に灰の中から幼児の焼死体が出て、同時に弟は行方不明になってしまった。人々は老婆の祟り(たたり)と恐れたが、息子は生きていると信じていた先代の伯爵の遺言で、今のルーナ伯爵は、いまだに弟を捜している」

第2場

アルゴン公爵の女官レオノーラ(ソプラノ)が、夜 庭にたたずみ、侍女イネズ(メゾソプラノ)に、名も知らぬ吟遊詩人を愛してしまったことを話す。暗闇の中、レオノーラに想いを寄せるルーナ伯爵(バリトン)が現れ、レオノーラは、待ち焦がれた吟遊詩人だと思い込み、ルーナ伯爵に走り寄る。そこへ本当の吟遊詩人(テノール)が現れ、間違えに気づいたレオノーラが、彼の足許に詫びる。怒ったルーナ伯爵は、吟遊詩人に「名を名乗れ」と迫り、彼は「我が名はマンリーコ」と言い、レオノーラが止めるのも聞かず、2人は決闘をするために出て行く。

第2幕 第1場

山中ではジプシーたちが陽気な“鍛冶屋の合唱”を歌っている。突然ジプシーの老婆アズチェーナ(メゾソプラノ)が「自分の母親は先代の伯爵に焼き殺された」と歌い出す。夜が明けて皆が山を下りて行き、1人残ったマンリーコ(吟遊詩人)は、もっと詳しく話してくれと頼み、彼女は「火焙りにされる母親の復讐をしようと、伯爵の息子を盗み出し夢中で処刑の火の中に投げ込んだが、それは自分の子供だった」と話す。アズチェーナを母親と思っていたマンリーコは「では自分は一体誰なのだ」と訝る(いぶかる)が、彼女は「お前は私の子だ」と答える。そこへ伝令が現れ「レオノーラが、マンリーコはルーナ伯爵との決闘で敗れて死んだと思いこんで絶望し、今夜修道院に入る」と書かれた手紙を渡し、マンリーコは、母アズチェーナが止めるのも聞かずに山を下りて行く。

第2場

修道院の前では ルーナ伯爵がレオノーラを略奪しようと待ち、彼女への想いを歌う。そこへ修道女に囲まれたレオノーラが現れ、伯爵が彼女を連れ去ろうとした時、家来を引き連れたマンリーコが剣を抜いて襲い、レオノーラを奪って連れ去る。

第3幕 第1場

マンリーコの居る山中を攻めるルーナ伯爵の陣営に、隊長フェルランドらが、アズチェーナを捕らえて引き立てて来る。伯爵は、その老婆が仇敵マンリーコの母で、昔、弟を盗んだジプシーであることを知り、マンリーコをおびき出そうと城塞の前に火刑台を作らせる。

第2場

レオノーラを手に入れたマンリーコは喜び、愛の歌を歌い、2人は礼拝堂で結婚式を挙げようとする。そこへマンリーコの部下のルイツ(テノール)が駆け付け、アズチェーナが捕らわれて火刑にされると伝え、マンリーコは「命を懸けても母を救うと」と叫んで飛び出して行く。

第4幕 第1場

戦いに敗れたマンリーコは捕らえられて牢獄に入れられてしまう。レオノーラは、伯爵にマンリーコの命乞いをし、伯爵は、その条件に彼女が自分に身を任せることを要求する。レオノーラは、その要求を受け入れ、密かに隠し持っていた毒を飲む。

第2場

牢獄では マンリーコが母アズチェーナを励ましている。そこへレオノーラが現れ、「命は許されたから逃げて」と言い、マンリーコは彼女が伯爵に身を許したと疑い、その不貞を責めるが、毒の回った彼女は「他の人に添うよりも死を選びました」と告げて、彼の胸に倒れる。そこへ現れた伯爵はレオノーラに図られたことを怒り、マンリーコを断頭台に引き立てる。牢獄からマンリーコの処刑を見たアズチェーナは、狂ったように伯爵に「あれはお前の弟だ。母よ、私は復讐を遂げた」と叫んで息絶え、伯爵は呆然と「酷い運命」と呟き幕となる。