♪Capriccio「カプリッチョ」
作曲:Richard Strauss(R. シュトラウス1864~1949)
内容:サリエリのオペラ「まずは音楽、それから言葉」を基に、R. シュトラウスとC. Kraussが共同で台本を書いた。R. シュトラウス最後のオペラで、第2次世界大戦の最中に初演された。オペラによるオペラ論の形を取った機知あふれる擬古典主義的喜劇で、純粋に音の美を求めたR. シュトラウス音楽の美の極致。 全1幕 ドイツ語
あらすじ
1775年頃のパリ郊外の城。音楽家フラマン(テノール)と詩人オリヴィエ(バリトン)は、若くして未亡人となった伯爵夫人マドレーヌ(ソプラノ)に恋している。フラマンの作曲した弦楽六重奏曲が演奏され、伯爵夫人は陶酔して聴き、フラマンは満足するが、恋敵オリヴィエは穏やかではない。彼女が2人のうちどちらを選ぶかというところから、「音楽か言葉か」かという議論にまで発展していく。劇場支配人のラ・ロッシュ(バス)も加わり、大オペラ論争になる。3人が伯爵夫人の誕生日の祝宴の用意のために去ると、伯爵夫人と兄の伯爵(バリトン)が 登場する。伯爵が、音楽を賛美する妹の伯爵夫人をからかうので、彼女は、「女優のクレロンにぞっこんだから戯曲の方が好きなのね」と兄を冷やかす。
劇場支配人ラ・ロッシュが、伯爵夫人の誕生日パーティーの演目は、フラマンのシンフォニア、オリヴィエの芝居、それに書下ろし「大活劇」と発表しているところに、パリから女優のクレロン(メゾソプラノ)が到着する。伯爵はクレロンと、オリヴィエの書いた芝居の朗読を始め、2人で劇場に去ると、オリヴィエは、伯爵夫人の前でその詩を読み上げ、「実はこれは貴女のために書いた」と愛を打明けようとする。その詩に感動したフラマンは、その詩に旋律をつけて歌にする。オリヴィエは、韻がメチャクチャになったと激怒するが、伯爵夫人は、音楽が詩に輝きを与えたと言う。オリヴィエが、ラ・ロッシュに呼ばれて劇場に去った後、フラマンは伯爵夫人に熱烈な愛を告白する。彼女は戸惑いながらも「明日の11時に書斎で」と答え、フラマンは感激する。
お茶の時間に一同がサロンに集り、余興にバレエが踊られ、伯爵が「踊りでは音楽は添え物に過ぎない」とフラマンに発言する。それが発端になって「音楽か言葉か」の議論が再開し、やがて「オペラ」論議に発展し、イタリア人歌手の二重唱が披露される。劇場支配人が、計画中の祝祭劇について語ると、一同は嘲笑したり反発したりする。劇場支配人は皆を制して、「詩人にも音楽家にも敬意を表するが、舞台芸術を創るには劇場支配人の力がなくてはならない」と自分の芸術論を熱く語る。皆は感動して大喝采し、伯爵夫人は「皆で協力して芸術作品を創造して欲しい」と言う。伯爵が「今日ここでの出来事をオペラにしよう」と提案し、皆は戸惑いながらも挑戦することになり、散会となる。
召使が片づけを終えた所に、ずっと居眠りをしていたプロンプター(舞台上で隠れてセリフ等の指示をする人)のトープ(テノール)が現れ、家令(バス)が別の馬車で送らせる。家令が、伯爵夫人に、オリヴィエからの「明日11時、オペラの結末を書斎でご相談したい」という伝言を渡し、それは彼女がフラマンと約束をした同じ時刻と場所である。どちらを選ぶべきか…伯爵夫人は、ソネットを今一度歌いながら自分に問いかけるが、答えは出ない。彼女が部屋を出ると、その結論を暗示するかのようなホルンの「月光の音楽」の動機が響き、幕となる。