♪Hänsel und Gretel「ヘンゼルとグレーテル」
作曲:Engelbert Humperdinck(フンパーディンク1854~1921)
内容:作曲家の妹A. Wetteが結婚してその子どもたちのために、グリム童話の同名の童話を基に童話劇を作り、その劇のために兄が音楽を作曲し、次第にアイデアが膨らみ本格的なオペラとなった。フンパーディンクはワーグナーの弟子で、ワーグナーがドイツ神話で成功した手法を、メルヘンの世界で応用して大成功を収め、クリスマスシーズンに最も多く上演される家族向きの、明るく楽しい、癒しのオペラ。
3幕 ドイツ語
あらすじ
第1幕 貧しい箒(ほうき)作りペーターの家
両親が働きに出て留守の間、兄ヘンゼル(メゾソプラノ)は箒作り、妹グレーテル(ソプラノ)は繕い物をしている。二人は、貧乏で食べるものがないので、いつも空腹でたまらない。今日は壺にミルクがあって、健気な兄妹はつまみ食いを我慢するが、仕事に飽きて踊り出す。そこへ、母親ゲルトルート(メゾソプラノ)が戻り、仕事をさぼっていることを怒って、二人を追い回すうちに大切なミルクの壺を割ってしまう。それを笑うヘンゼルとグレーテルに癇癪(かんしゃく)を起した彼女は、二人を森へ苺狩りに行かせる。父親ペ-ター(バリトン)が、陽気に「祭が近いので箒が飛ぶように売れた」と帰宅し、たくさんの食べ物をゲルトルートに見せる。そして、そろそろ日暮れも近いというのに子どもたちが森から戻らないと聞いて驚く。ペーターは「森には子どもを食べてしまう魔女が住んでいる」と話し、夫婦は慌てて子どもたちを捜しに出て行く。
第2幕 森の中
不気味な音楽で幕が開くと、森の中でヘンゼルとグレーテルが、カゴいっぱいの苺を摘み終え、ひと休みしている。二人は、カッコーの鳴き声に合わせて一粒だけとイチゴをつまみ、あまりの空腹のために我慢がきかず全部食べ尽くしてしまう。気がつくと辺りは暗闇が迫り、このまま帰っては母親に叱られると、二人は途方に暮れる。眠りの精(ソプラノ)が現れて、木霊(こだま)に怯える二人に眠りの砂をかけると、二人は«夜、私が眠りにつくと»と、夕べの祈りをしてすやすやと眠りに落ちる。二人は、天から14人の天使が降りて来て二人の周りで踊る美しい夢を見る。
第3幕 森の中
夜明けに露の精(ソプラノ)が現れて、ヘンゼルとグレーテルを起こす。目を覚ました二人は、同じ天使の夢を見たことを話し不思議がる。朝もやの向こうの森の奥にお菓子でできた大きな家が見え、二人は恐る恐る近づく。ヘンゼルとグレーテルは、これはきっと天使様の贈り物に違いないと決め込んで、夢中になってお菓子の家を食べ始める。中から魔女(バリトン)が現れ、ヘンゼルを捕まえ、隙をみて逃げようとする二人に、魔法の杖を振り上げ«ホークス・ホークス金縛り»と呪文を唱えるので、二人は動けなくなくなる。ヘンゼルを檻(おり)に閉じこめた魔女は、ヘンゼルには食べ物を与えて太らせて食べようと考え、グレーテルには小間使いとして働かせるために金縛りの呪文を解く。魔女は、箒に乗って空を飛び、戻って来てはヘンゼルの指を出させて太り具合を確かめるが、賢いヘンゼルは、指の代わりに細い枝を差し出して目の悪い魔女をだます。いつまでも太らないヘンゼルに腹を立てた魔女は、グレーテルを先に食べようと決める。しかし、利口なグレーテルは、魔女が唱えた秘密の呪文を覚えていて、こっそりそれを唱えてヘンゼルの呪縛を解いてやる。魔女は、グレーテルにかまどの火加減を見るよう命ずるが、グレーテルは、かまどの中の見方を知らないととぼけ、魔女が手本を示そうとかまどをのぞき込んだ時、ヘンゼルとグレーテルは、力を合わせて後ろから魔女をかまどに押し込んで扉を閉める。二人は大喜びで、«ヤホーイ、悪魔は死んだ»と«ビスケットのワルツ»を歌い踊る。かまどは爆発し、中からこれまで捕まえられていた子どもたちの動けずに固くなっている姿が次々に現れる。ヘンゼルは、呪文で皆の魔法を解き、皆で喜びの合唱をし、そこに、両親のペ-ターとゲルトルートが駆けつけ、子どもたちを見つけて喜びあう。こんがり焼き上がってお菓子になった魔女を囲んで、皆は天罰てきめんだと歌い、神に感謝するペーターに唱和して、子どもたちが踊る中、幕となる。