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♪La Vestale「ヴェスタの巫女」

by hidepost, le 20 juin 2015

作曲:Gaspare Spontini(スポンティーニ1774~1851)
内容:イタリア人作曲家スポンティーニは、1805年にフランス宮廷作曲家になった。このオペラは、1807年にジョゼフィーヌ皇后に励まされて作曲され、パリ・オペラ座で初演された傑作。ミラノスカラ座で、名ソプラノ歌手マリア・カラスと有名な映画監督ヴィスコンティで上演された公演は有名。
3幕 フランス語

あらすじ

幕前の設定

ローマの将軍リチーニョは若い頃、上流階級の令嬢であるジューリアを愛していた。しかし、ジューリアの父は身分の違いを理由にこれを認めなかったため、リチーニョは、軍隊に入って数々の武勲を立ててローマの将軍にまで上り詰める。5年の後、高い身分を得たリチーニョは再びジューリアに求婚すべく帰ってくるが、その時には既にジューリアの父は他界しており、娘のジューリアは父の遺言に従って、ヴェスタの巫女となっていた。

第1幕 ヴェスタの神殿

凱旋将軍リチーニョ(テノール)は、友人で軍の隊長のチンナ(テノール)に、巫女になってしまったジューリアを、何とか手に入れる方法はないかと相談している。ジューリアを神殿から誘拐するとまで言うリチーニョを、チンナは止めるが、リチーニョの決意が固いので、遂には彼への協力を誓う。
二人が立ち去ると、巫女たちが現れ、夜明けの祈りを捧げて再び神殿に戻ってゆく。巫女の長(メゾソプラノ)は、巫女の中からジューリア(ソプラノ)をひとり引き留め、「今日、お前に最後の試練を与える」と宣言し、«アリア:愛は魔物»を歌って、巫女にとって恋は禍のもとであるときつく忠告する。そして、ジューリアに 今夜から聖火を守る不寝番になること、さらに今日の凱旋将軍に冠を授ける役目を命じて立ち去る。ジューリアは、長い間離れていたリチーニョに再会する喜びと不安を、«アリア:もうじき貴方にお会いできる»で歌う。
凱旋の行列が現れ、式典が始まる。リチーニョは祭壇に登り、冠を授けるジューリアに、今夜一緒にこの神殿から逃げ出そうと囁く。平静を装うジューリアは厳かに冠を与えるが、二人の動揺とは関係なく、大祭司長(バス)は、カンピドーリオの丘で生贄(いけにえ)を捧げる儀式を行う事を告げ、民衆は喝采して合唱する。

第2幕 神殿の中

巫女の長は、ジューリアに黄金の火かき棒を与えて、聖火の火を絶やすことのないようにと注意を与えて立ち去る。聖火の側に一人残ったジューリアは、リチーニョへの愛と神への忠誠の間で苦しみ、«アリア:神よ、恐れおののき祈りを捧げます»を歌う。そこへリチーニョが現れ、ジューリアに一緒に逃げようと誘惑する«二重唱:神々も憐れみをかけてくださるだろう»。始めは頑なに拒んでいたジューリアも、遂に愛する人の言葉に負けて、一緒に逃げる事を承諾する。すると、それまで燃え続けていた聖火が音もなく消えてしまう。ジューリアは神の怒りに違いないと悟り、愛するリチーニョにまで禍が及ぶことを恐れ、一緒に逃げることはできないと言う。そこにチンナが現れて、聖火が消えたことを民衆が騒ぎ始めたので、二人ともすぐに逃げるようにと言うが、ジューリアは動こうとしない。祭司たちの来る気配に気付いたチンナは、リチーニョだけを強引に連れてその場を逃げ出す。残ったジューリアは大祭司長に身の潔白を疑われるが、彼女は弁解をしないで、死を望んで神に祈り、«アリア:薄幸の人々の守護神よ»を歌う。大祭司長は、ジューリアに恋人の名を明かすように求めるが、彼女は口を割ろうとしない。怒った大祭司長はジューリアから聖帯と聖衣を剥ぎ取って連行するように命じる。

第3幕 生き埋めの墓のある丘

リチーニョは«アリア:ああ!私は生きているのに»を歌い、ジューリアを失ったことを嘆く。チンナが現れ、ジューリア救出のために兵士たちを集めてきたことを知らせる。そこに現れた大祭司長に、リチーニョはなんとかジューリアを許すように頼むが、大祭司長は許さない。怒ったリチーニョは、それでは力ずくでもジューリアを救うと言って立ち去る。
ジューリアが、生き埋めの丘に引かれて来て、巫女の長に別れを告げる。大祭司長は、巫女たちにジューリアのヴェールを聖火台の上に捧げるように命じる。それは掟によって、もし彼女のヴェールが聖火台に捧げられた時に聖火に火が点れば、ジューリアは無実となるからであった。しかし、奇蹟は起こらず聖火に火は戻らない。遂に、ジューリアに墓穴に入るようにと最後の命令が下される。ジューリアは、«アリア:名を口に出せぬ愛しい人よ»を歌って、愛する人に別れを告げる。いよいよジューリアが墓穴に入ろうとしたその時、リチーニョが現れて、自分がジューリアの恋人であると名乗りをあげ、率いてきた兵士たちにジューリアを救うように命じる。兵士と祭司たちがもみ合おうとすると、突然、あたりが暗闇につつまれ、一陣の風とともに天空から火の玉が聖火台の上に落ち、そこにあったジューリアのヴェールを燃やして、聖火に火を灯す。大祭司長は争いを止めさせ、奇蹟を告げ、ジューリアの罪が許されたことを宣言し、ジューリアをリチーニョの手に渡す。神殿に皆の祝福の声がこだまして、幕となる。