♪Mitridate, Re di Ponto「ポントの王ミトリダーテ」
作曲:Wolfgang Amadeus Mozart(モーツァルト1756~1791)
内容:ラシーヌの同名の悲劇を基に、V. A. Cigana-Santiが台本を書いたものに、当時14歳だった天才少年モーツァルトが、ミラノで歌手の注文を聞きながら、実地にイタリア・オペラ様式を学びつつ作曲したオペラセリア。この時期に変声期を迎えたモーツァルトは、父親とイタリアに滞在し、ミラノでの初演(1770年)の指揮もして大成功を収め、イタリアオペラデビュー作となった。 3幕 イタリア語
あらすじ
第1幕 第1場
ポントの王ミトリダーテは、ローマ軍との戦いに出陣中で、彼の若い許嫁アスパージア(ソプラノ)を二人の息子に託していた。ところが最近王が戦死したという報告が入り、それは息子たちの態度を試すために、ミトリダーテ王自身が流したものであった。
王のいない王宮で、王の許嫁アスパージアが、次男シーファレ(ソプラノ)に「兄君のファルナーチェが言い寄って来るので私を守ってください」と訴え、シーファレは彼女を守ることを約束し《私の心は静かに耐える》を歌う。
第2場
かねてからアスパージアに思いを寄せていたミトリダーテの長男ファルナーチェ(カウンターテノール)は、強引に彼女に結婚を迫り、彼女を守ろうとする弟シーファレと対立する。兄弟の争いが始まろうとした時、総督アルバーテ(テノール)が現れ、ミトリダーテ王は生きており、無事帰還したと告げ、実は弟シーファレを密かに愛しているアスパージアは、嘆いて立ち去る。父王の帰還に兄弟は争いをやめるが、父に不満を抱く長男ファルナーチェは、ローマ護民官マルツィオ(テノール)のローマへの寝返りの誘いに心が動く。
第3場
ポントの王ミトリダーテ(テノール)は、長男ファルナーチェの許嫁であるバルティア王の娘イズメーネ(ソプラノ)を連れて帰ってくる。ミトリダーテ王は、息子たちがポントの国を離れてここニンフェーアに来ていることを叱責する。息子二人にイズメーネを宮殿に案内するように命ずるが、彼女は許嫁ファルナーチェの心変わりを察して苦しむ。ミトリダーテ王は、総督アルバーテに戦死の報は息子たちを試すためであったと打ち明け、総監アルバーテから長男ファルナーチェの裏切りを報告されて怒る。
第2幕 第1場
イズメーネが、許嫁ファルナーチェにその心変わりを嘆くと、彼は熱情が冷えたのだと《私の過ちを王に知らせよ》と開き直る。イズメーネの訴えを聞いたミトリダーテ王は、彼女に長男ファルナーチェではなく弟のシーファレとの結婚をすすめる。ミトリダーテ王は、自分の許嫁アスパージアが自分に冷たいのは、長男ファルナーチェを愛しているからなのではないかと疑い、シーファレを呼び、アスパージアとファルナーチェに王の怒りを伝えよと命ずる。シーファレは、アスパージアに事の真相を問いつめるが、逆にアスパージアが自分を愛していることを知ってしまう。シーファレもまた密かにアスパージアを愛していたために、彼は父への忠誠と愛の間で苦しむ。
第2場
ミトリダーテ王がファルナーチェにローマ攻略を命ずるが、彼は従わないので、兄に代わって、シーファレが出陣を願い出る。そこにローマ護民官マルツィオが現れるので、長男ファルナーチェの裏切りを確信したミトリダーテ王は怒り、彼を捕える。ファルナーチェは、裏切り者は自分だけではない、弟のシーファレこそアスパージアが恋する相手だと密告して逆襲する。驚いた王はアスパージアを呼んで彼女の心を試し、彼女はシーファレへの愛を認めてしまう。ミトリダーテ王は《慈悲は捨てたぞ》と復轡を誓って去り、残ったシーファレとアスパージアは二人で死のうと歌う。
第3幕 第1場
イズメーネが息子たちへの慈悲、アスパージアもシーファレの無実をミトリダーテ王に訴えるが、総監アルバーテがローマ軍の攻撃を告げ、王は出陣して行く。アスパージアのもとには毒杯が届く。彼女がそれを飲もうとした時、イズメーネに救われたシーファレが駆けつけて毒杯を奪って捨て、父ミトリダーテ王を助けるために出陣していく。
第2場
ローマ護民官マルツィオが攻め込んできて、牢に捕えられているファルナーチェを救出する。
第3場
戦いで負傷したミトリダーテ王が、シーファレに付き添われて王宮に帰ってくる。死を覚悟したミトリダーテ王は、シーファレの誠実を理解し、彼に王位とアスパージアを与える。そこにイズメーネが駆け込み、ファルナーチェも後悔して、ローマ軍の船に火を放ったと伝え、王に許しと慈悲を乞う。ミトリダーテ王は、長男ファルナーチェも許し、アスパージアとシーファレ、イズメーネとファルナーチェは結ばれ、ミトリダーテ王は心安らかに息絶える。一同は高らかにローマヘの抗戦を続けることを誓い、幕となる。