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♪Le Coq d’or「金鶏」

by hidepost, le 16 mai 2016

作曲:Nikolay Rimsky-Korsakov(リムスキー=コルサコフ1844~1908)

内容:プーシキンのおとぎ話を基に、V. I. Bielskyが台本を書いた、リムスキー=コルサコフの15番目の最後のオペラ。美しく楽しい音楽だが、1905年の「血の日曜日事件」を知った60歳のリムスキー=コルサコフは、その怒りをオペラで表現した。痛烈な帝政ロシアに対する体制批判と風刺から検閲を通過できず、作曲者の死後に初演となった。プロローグとエピローグ付き3幕 ロシア語

あらすじ

プロローグ

序曲として、「金鶏」、「シェマハの女王」、「星占い師」の各モチーフが管弦楽で奏された後、星占い師(テノール)が、観客に「これからおとぎ話が始まる。架空の話ではあるが良い教訓が秘められている」と口上を述べて退場する。

第1幕

ドドン王の宮殿。かつては威風を誇ったドドン王(バス)も、最近ではすっかり怠惰な日々を過ごして、それを知る近隣諸国が攻撃してくる始末。しかし、彼は相変わらず飽食と惰眠(だみん)に耽(ふけ)り、グヴィドン王子(テノール)とアフロン王子(バリトン)の2人と、ポルカン大臣(バス)、貴族らを招集して、隣国の侵入にどう対処するか会議を開いている。グヴィドン王子は、軍隊を国境から引き揚げて、都で英気を養って反撃しようと提案するが、ポルカン大臣は敵が城下で大砲を撃ったらおしまいだと反対する。次にアフロン王子が、敵が攻めて来る一月前に先制攻撃を仕掛けようと提案するが、ポルカン大臣は、敵が攻めて来るのを予告することがあるのかと、またもや反対する。何にでも反対するポルカン大臣に皆は怒って殴りかかるので、ポルカン大臣は退場する。誰も良い知恵が浮かばず、貴族の中から、女占い師、魔法使い、あるいは豆占いはという声が上がる。その時、星占い師(テノール)が現れ、危機が迫るとそれを知らせるという金鶏を王に献上し、その金鶏(ソプラノ)は、「キリキ、キリクク!寝ころんで治めろ!」と叫ぶ。皆は驚嘆し、ドドン王は、「この金鶏に敵の侵入を見張らせよう」と喜んで、星占い師に何でも望みを叶えようと言う。星占い師は「権力も富も地位も余計な敵を作るものなので辞退します。私の大切なものは愛です」と答える。星占い師や王子、貴族たちが退いた後、金鶏は「寝ころんで治めろ」と鳴き、ドドン王は 満足しきって、女官長アメールファ(アルト)の世話を受けながら昼寝をする。突然、金鶏 が「用心しろ!警戒しろ!」と叫ぶ。ポルカン大臣が駆け込んできて、敵の来襲を告げるので、王は気乗りのしないグヴィドン、アフロン両王子に出陣を命じる。王子らの出陣を見送ると、金鶏が再び「寝ころんで治めろ」と鳴くので、王は再びまどろみ、見知らぬ美女の夢を見る。アメールファや近衛兵らもまどろむ。またも金鶏が「警戒しろ!」と叫び、ポルカン大臣が王を起こし、都の民衆は恐慌状態となる。ドドン王は気乗りしないまま、ポルカン大臣に急き立てられて馬上の人となり自ら出陣する。民衆は王の身を案じながらも、「我らの王様、万歳!」と合唱し、王の出陣を勇壮な行進曲で見送る。

第2幕

ドドン王の軍勢が、夜の戦場に到着すると、味方の軍勢は全滅しており、グヴィドン、アフロン両王子は刺し違えて死んでいた。ドドン王は、嘆き悲しみながらも敵の姿を捜す。夜が明け霧が晴れると、一つの派手な天幕が現れる。ポルカン大臣が大砲で攻撃しようとすると、天幕の中からシェマハの女王(ソプラノ)が、四人の女奴 隷を従えて登場し、「太陽への讃歌」を歌う。ドドン王もポルカン大臣もその歌声にうっとりとする。シャマハの女王は、「ドドン王の都を軍隊の力でなく美の力によって奪いに来た」と王に告げ、酒を振舞う。兵士たちは退き、戦死者の遺体も片付けられ、三人だけになり、シャマハ女王はドドン王に愛を語るが、ポルカン大臣が話の邪魔をするので、王に命じて彼をを追い出してしまう。再びシャマハ女王はドドン王を誘惑し、アリア「ああ若さはすぐに衰え」を歌う。そして、ドドン王にも一曲歌を頼むが、生まれてから歌ったことがない王の歌を聞いて笑い、王子たちも自分を愛したため、刺し違えたのだと語る。王は怒るが、女王は、東方の自分の生まれ故郷を思って歌い泣き始める。ドドン王が慰めると、女王は王に踊りを求め、生まれてから一度も踊ったことのないドドン王の兜をとる。無理やり踊らされた王は疲れて倒れてしまう。ドドン王は、シェマハの女王の前に跪(ひざまず)き「国も自分もお前に捧げる。都で一緒に暮らそう」と申し出る。出発の支度をする中、女王の女奴隷たちはドドン王を嘲笑する歌を歌うが、王は有頂天で兵士たちに「花嫁と凱旋だ」と告げ、兵士たちの万歳の合唱となる。

第3幕

ドドン王の宮殿前に不安に駆られた都の民衆が集まっているが、金鶏は鳴かない。アメールファが「王様が女王様を連れて帰ってくる、皆で迎えよう」と告げ、行進曲と共に、行列が近づいて来る。シェマハの女王の従者の中には、大男や矮人(わいじん)、犬頭や一つ目など異様な者がいるが、最後に王と女王を乗せた 馬車が登場し、民衆は王を讃(たた)える。そこへ星占い師が登場し、約束の褒美としてシェマハの女王を求めるので、ドドン王は翻意させようとするが、彼は頑固に女王をと譲らない。怒った王は、王杖で星占い師の頭を打ち、星占い師は死んでしまう。すると、突然雷鳴がとどろき、王は祟(たた)りを恐れるが、シェマハの女王は笑い始める。王は女王に接吻しようとするが、女王は「お前のような出来損ないは消えてしまえ」と叫ぶ。突然、金鶏が耳をつんざくような鳴き声で「爺の頭を突っつくぞ!」と叫び、ドドン王の頭を突っつき、ドドン王は死ぬ。シェマハの女王は、高笑いをしながら金鶏とともに消え去る。後には民衆だけが取り残されて、王様無しでどうなるのか、悲しみの合唱で幕となる。

エピローグ

星占い師が現れて、「お話はお終い。悲惨な結末を畏れなくてもいい。何故なら実在したのは私と女王だけ。残りは幻さ。」と意味深長に告げ、観客に一礼して姿を消す。