Pinocchio「ピノキオ」
作曲:Philippe Boesmans(ブスマンス1936~)
内容:フランス人演出家J. Pommerat (1963~)は、有名なディズニーの同名の映画などには背を向け、1883年にイタリアの作家C. Collodiが書いた児童文学を、教訓的なものよりも、富と近代化に反対する原作のテキストに戻って台本を書いた。音楽は1985~2007年の間、モネ劇場の座付き作曲家であったベルギー人作曲家P. Boesmans(1936~)が、19人の楽器奏者と6人の歌手(それぞれが複数の役をする)のために作曲。この夏のエキサン・プロバンス国際音楽フェスティバルが、数々の成功を収めたこの2人のコンビに委嘱して世界初演し、モネ劇場修復後の幕開けでベルギー初演される。フランス語
あらすじ:
プロローグ 芝居小屋の劇場長(バリトン)がナレーターとして現れ、聴衆に目を閉じるように促す。劇では、目を閉じて真実の目で観ると、よりはっきりと深く観る助けになると言い、物語を話す。
父の家の中と庭
あまりに消極的なために、結婚できず子どももいない父=ペール(バスバリトン)は、ある夜嵐で倒れた木を使って、声を持つ人形パンタン(後のピノキオ)を作る。
パンタン(ソプラノ)は空腹で、父親が無能なために貧乏なことを嘆いている。その上、父が学問をすることは将来働いてお金を得るには必要不可欠であると、彼に学校に行くように言うのにうんざりするが、教科書を買うことを条件にしぶしぶ受け入れる。父は教科書のために自分の外套を売ってそのお金を作る。
通学路の途中-見世物小屋
パンタンは、学校へ行く途中に見世物小屋に気を惹かれる。2人の詐欺師(バリトン、テノール)が近づいて、彼に学校に行くのを思い止まらせ、パンタンは教科書を見世物小屋の入場券と交換してしまう。見世物小屋の美しい歌手(メゾソプラノ)に魅了されたパンタンは、思わず舞台に上がって彼女を抱擁し騒動を引き起こして、見世物小屋長(テノール)の所に連れて行かれる。他人を理解するのに感じやすい見世物小屋長は、パンタンの話に感じ入り、彼に父と分けるようにと充分なお金を与え、用心深くしていなさいと勧める。
奇跡の野原-法廷-牢獄
パンタンは再び2人の詐欺師に出会い「お前のお金をもっと増やす奇跡の野原に連れて行く」と誘惑される。騙されてお金を盗まれたとわかっても後の祭り。パンタンは裁判官(テノール)に即刻投獄を宣言される。牢獄を出たパンタンは3人の殺し屋(テノール、バリトン、バスバリトン)に会い、「僕はお金持ちだ」と嘘をつき、木に吊るされてしまう。
妖精の家-学校
パンタンは、実は妖精である優雅な歌手(ソプラノ)の傍らで目が覚め、嘘をつくたびに自分の鼻が伸びてしまうことがわかる。妖精はパンタンに「学校に行けば、お前は本当の男の子になれる」と約束する。
皆が驚く中、パンタンはクラスの中で1番良い生徒となり、悪い生徒が不和の種を蒔いて教師(バスバリトン)が手を焼いても、彼は気をそらせない。そのご褒美として、妖精はパンタンを本当の男の子にすると約束し、級友をそのお祝いに招待するように励ます。
本当の人生の国-サーカス
パンタンは、悪い生徒(メゾソプラノ)を招待することを試みて、彼の言う“本当の人生の国=全てが楽しい事しかない国”に巻き込まれる。2人は知らない間にロバに姿を変えられ、ロバ売り(テノール)が、競売で最高額をつけたサーカスの支配人に売ってしまう。次いでパンタンは太鼓製作者に転売され、海に投げ込まれてしまう。
鯨の腹の中
海に投げ出されたパンタンは、鯨に腹の中に飲み込まれ、そこでパンタンを探しに行った父に会う。今まで父の言いつけに逆らってきたパンタンも、鯨が彼らを排出するための策略を考えて、今まで従順でなかったことを帳消しにして「僕は完璧にはお父さんが望むようにならないけれど、きっともっと良い子になるから、見ていて」と言う。
数か月後、パンタンはピノキオと名付けられ、本当の少年となって、幕となる。