Skip to content

♪ Don Giovanni「ドン・ジョバンニ(または罰せられた放蕩者)」

by hidepost, le 1 déc 2019

作曲:Wolfgang Amadeus Mozart(モーツァルト1756~1791)

内容:ウィーンではあまり人気の出なかった前作「フィガロの結婚」が、プラハ国立劇場で大成功した後、同劇場からの依頼で作曲された。台本は、スペインの色事師「ドン・ファン伝説」をベースにした、モリエールの戯曲「ドン・ジュアンまたは石像の宴」他、多数を基にしている。モーツァルトはこのオペラの作曲初期に父親を失くし、彼のオペラでは「人の死」を扱った唯一のオペラで、作品に特異な深さと広がりがある。 2幕 イタリア語

あらすじ

初演の前々夜、妻コンスタンツェの話しを聞きながら一晩で作曲されたという、死の足音やレポレロの震えるリズムを表現する序曲が終わり、幕が開く。

第1幕

明け方、騎士長の邸宅に忍び込んだ主人ドン・ジョバンニを外で待つ従者レポレッロ(バス)は、こんな主人に仕える仕事はいやだとぼやいている。ドン・ジョバンニ(バリトン)は騎士長の娘であるドンナ・アンナ(ソプラノ)の部屋に忍び込んだが、彼女に騒がれて外へ出てくる。父の騎士長(バス)が起きてきて、ジョバンニに決闘を挑み、アンナは助けを求めに家へ入るが、騎士長は逆にジョバンニに殺されてしまう。アンナは悲嘆に暮れ、連れてきた許嫁のオッターヴィオ (テノール)に父の復讐を果たしてほしいと頼む。

騎士長宅から逃げて来たジョバンニに、レポレッロが「旦那のやり方は酷いです」と忠告するが、ジョバンニは、早速折からやってきた女に手を出すことを考えている。しかしその女は、昔ジョバンニが3日だけ妻にして捨てたドンナ・エルヴィーラ(ソプラノ)で、ジョバンニはその場をレポレッロに任せて去る。残されたレポレッロはエルヴィーラに「旦那に泣かされたのはあんただけじゃないよ。イタリアでは640人、ドイツでは231 人、しかしここスペインでは何と1003人だ」と有名な≪恋のカタログの歌≫を歌って慰めたつもりになっている。エルヴィーラは復讐を誓って去る。

村の青年マゼット(バス)と村娘ツェルリーナ(ソプラノ)の結婚を祝って、若者たちが歌っているところにジョバンニが現れる。早速、新婦ツェルリーナに目をつけた彼は、彼女と二人きりになろうとして、皆を自宅に招待して喜ばせる。ジョバンニがツェルリーナを自らエスコートしようとするので、マゼットは拒むが、ツェルリーナ自身が大丈夫だと言い、ジョバンニが剣をちらつかせるので、マゼットはしぶしぶ引き、ツェルリーナに皮肉を言って去る。思わぬ展開に半べその彼女を早速ジョバンニが口説き、ツェルリーナはあっけなく彼に手を取られて屋敷に向かおうとするが、そこに再び現れたエルヴィーラが、ジョバンニの本性を警告して彼女をジョヴァンニから逃す。

「今日はついてない」とぼやくジョバンニの前に、騎士長の仇の復讐を誓っているオッターヴィオとアンナが登場する。しかしアンナは今朝忍び込んで父親を殺した者が目の前のジョバンニだとは気づいていない。再びエルヴィーラが現れ 「この男を信用してはいけません」と言い 、ジョバンニは「彼女は頭がおかしいのです」と言い繕(つくろ)い、アンナとオッターヴィオはどちらを信用して良いのか解らない。ジョバンニは適当にごまかしてその場を去るが、彼の別れ際のひとことを聞いて、アンナはジョバンニが今朝父を殺した男だと気づく。残ったオッターヴィオは、許嫁のアンナへの愛をアリア≪彼女の幸福こそ私の願い≫で歌い、復讐を誓って去る。

レポレッロは、主人の命令通りにジョバンニの屋敷で村の若い男女に酒や料理を振る舞い、ジョバンニは「皆で元気に酒を飲め、おれはその間にカタログの名前を増やすのだ」という有名な≪シャンパンの歌≫を豪快に歌う。

宴に招かれた人々が庭で待っている。マゼットは新婦ツェルリーナが軽薄で浮気者だと怒っている。しかしツェルリーナは≪ぶってよ私のマゼット≫とアリアを歌い、下手に出て機嫌を取るので、単純なマゼットはすぐに機嫌を直す。

そこにエルヴィーラ、アンナ、オッターヴィオが、ジョバンニの罪を暴くため、仮面をつけてやって来て、レポレッロに招待されて祝宴に紛れ込む。レポレッロが、マゼットとツェルリーナを引き離し、ジョバンニはツェルリーナを別室に連れて行く。襲われて悲鳴をあげる彼女。それをきっかけに3人は仮面を脱ぎ捨て、ジョバンニを告発する。ジョバンニは、レ ポレッロに罪を擦り付けてごまかそうとするが、もはや誰もだまされない。ジョバンニは窮地に陥るが、大混乱の内に隙をみてレポレッロと逃げ出し、1幕が終わる。

第2幕

レポレッロはジョバンニに「もうこんな仕事はいやだ、お暇をもらいたい」というのだが、最終的には金貨に負けて、性懲りも無く次はエルヴィーラの女中を狙う話となる。レポレッロと衣裳を取り替えたジョバンニは、窓辺にエルヴィーラを呼び出し、レポレッロの陰からいかにも反省したかのようにエルヴィーラを口説き、ついその気になって出てきた彼女とレポレッロを 大声を出しておどかして去らせる。一方、レポレッロの格好をしたジョバンニは、エルヴィーラの部屋の窓の下で、女中のためにセレナード≪窓辺に出でよ≫を歌う。

そこにマゼットが村の若い衆とともに登場する。皆、棍棒や銃を持ち、これからジョバンニを殺すのだという。これを聞いたジョバンニは、レポレッロの衣装を着ているのを幸いに、彼になりすまして、皆をあちこちに分散させて、自分とマゼットだけになると、剣の裏側でマゼットを打ち据えて去る。

痛がるマゼットのもとにツェルリーナが駆けつけ、アリア≪薬屋の歌≫を歌って介抱し、痛みを忘れた新郎と、いそいそとその場を去る。

一方、ジョバンニに扮して、エルヴィーラと思わぬデートをする羽目になったレポレッロは、何とかごまかして彼女から離れようとするが、運悪くアンナとオッターヴィオに出くわしてしまう。逃げようとすると、マゼットとツェルリーナもやって来る。彼がジョヴァンニだと思っている4人は、彼を殺そうとするが、エルヴィーラ がジョヴァンニのために命乞いをする。4人は、ジョヴァンニを恨んでいたエルヴィーラが彼の命乞いをするのに驚くが、ジョヴァンニ(実はレポレッロ)を許そうとはしない。レポレッロはついにジョバンニのマントを脱いで正体を明かし、平謝りしながら隙をみて逃げ出す。

オッターヴィオは、ドン・ジョバンニが殺人犯である事を告発しに行くので その間≪私の恋人を慰めて≫と恋人アンナを慰めるアリアを歌う。一人残ったエルヴィーラは 未だにジョバンニを忘れられずにいる胸の内をアリア≪あの恩知らずは私を裏切り≫で歌う。

真夜中に逃げて来たジョバンニは レポレッロと 墓地で落ち合い、 互いに衣裳をもどしながら女の話をして高笑いをする。すると そこに立っている殺された騎士長の石像が「その笑いも明日迄だ」と口をきき、レポレッロは腰を抜かす。ジョバンニはその碑名を読み、その墓が騎士長のものとだと解ると レポレッロに今夜の晩餐に招待するように命じる。レポレッロが伝えると騎士長の石像が頷(うなず)くので 恐怖に震える。

アンナ邸では オッターヴィオが長い婚約にはやる心を アンナに訴え、結婚を求めるが、アンナは父親が亡くなったすぐ後なので今は適当な時期ではないという。オッターヴィオは非礼を詫びるが、これはアンナにオッターヴィオの真実の愛と誠実さを確信させ、アリア≪むごい女ですって≫へとつながる。

ドン・ジョバンニの館では すっかり晩餐の準備ができて、楽士たちが当時流行の音楽を奏でている。その中にはモーツァルト自身の「フィガロの結婚」の中のアリア≪もう飛ぶまいぞこの蝶々≫もあり、レポレッロが「これは有名だ」と言い観客を笑せる。

エルヴィーラが現れ「過去は忘れますから 生活を改めて」と頼むが、ジョバンニは相手にせず 彼女は退場するが 悲鳴を上げる。レポレッロを見に行かせると彼も悲鳴を上げ、招待された石像が入ってくる。石像は握手をするジョバンニの手を離さず「悔い改めよ、生き方を変えろ」と迫るが、ジョバンニが拒否すると、 突然床が割れて ジョバンニは石像と共に地獄に落ちる。

アンナたち全員が司法官を連れてやって来て、レポレッロから事の次第を聞き、ジョバンニが地獄に落ちたことを知る。アンナはオッターヴィオに結婚は1年待ってと言い、エルヴィーラはジョバンニのために修道院に入る決意を述べ、ツェルリーナはマゼットと平和な家庭を夢み、レポレッロはもっとましな主人を見つける、と それぞれが明日を語り、「悪事の果てはこの通り」と明るい六重奏で幕となる。