~ベルギーの学校事情~

 私たち日本人にとって4月は新入学の季節。桜並木をくぐり抜け、小学校に入学する子供たちを想像する方も多いことでしょう。ここベルギーでの新学年は9月に始まります。今の時期は、「あと一息で長い夏休み」と少々1年の疲れが出てきているころ。さて、ベルギーの教育制度はどのようになっているかご存知ですか。ベルギーでは、国ではなく連邦を構成するフランス語、オランダ語、ドイツ語の各共同体に教育政策に関する権限があります。日本とはちょっと違った教育制度を覗いてみましょう。

 幼稚園école maternelle)は義務教育ではありませんが、働く母親の多いベルギーでは早くから子供を幼稚園に通わせます。公立、私立幼稚園とも2歳半から基本的にオムツのとれた子の入園を受け入れていますが、中には、オムツ持参で通い、幼稚園でトイレ訓練を完了する子もいます。子供が2歳半になり、クラスに空きがあると年度の途中からでも入園できるのがいいところ。クレッシュ(crèche保育園)やファランドリーヌ(farandoline託児所)に子供を預けている親にとって教育費が無料になる幼稚園は待ち遠しいものです。

 6歳になる年の9月に小学校école primaire)入学です。したがって、入学の時点でまだ6歳になっていない生徒もいるわけで、心配する親が教室までついてくる光景を見かけます。義務教育は6歳から18歳。小、中、高校生の年齢層は日本とほぼ同じですが、学年相当以上の能力のある生徒は飛び級をしたり、反対に学年終了水準に満たしていないと判断された生徒は、先生、カウンセラー、親との相談のもと留年したりすることもあります。ですから、12月生まれの生徒が通常より早く1年生に入学したり、留年して同じ学年を2回やる生徒もいるわけです。しかし、どの場合でもクラス内で目立つことはなく、子供たちはその学年の必須教科をちゃんと履修しています。

 学校は公立(コミューン管轄)と私立の2種類があります。私立は主にカトリック系、宗教の授業がカリキュラムに組み込まれています。日本の私立校は学費がかさみますが、ベルギーの教育は無料。私立校も政府からの補助金を受けているため、教科書代くらいの費用しかかかりません。もちろん公立、私立に関わりなく給食費や雑費は請求されます。

 この国に学区制はなく、親は公立、私立を問わず自由に学校を選べます。統計によると、フラマン語圏では8割が、また、フランス語圏では5割が私立学校に通っています。

 12歳になる年度に中学校école secondaire inférieure)へ、16歳になる年度に高等学校école secondaire supérieure)へ入学します。ベルギーでは、中・高6年間が一貫教育で、中学3年生の時点で将来の進路を決定します。そして、大学を目指す生徒は一般コース、専門学校を目指す生徒は実科コース、中卒後就職を希望する生徒は職業コース、美術、音楽の道へ進む生徒は芸術コースをそれぞれ選びます。

 大学université)への進学に選抜試験はなく、中等教育での良い成績が条件となり、生徒が自由に進学を決められます。ベルギーには現在8つの大学(フラマン地方はルーヴァン、ゲント、アントワープに、ワロン地方はリエージュ、モンス、ルーヴァン・ラ・ヌーヴに、ブリュッセルは、ブリュッセル自由大学が蘭語系(VUB)と仏語系(ULB)に分かれて存在)があり、最初の2年間が教養課程、後の2年間(医学部は7年間、歯学部は6年間)が専門課程となっています。