♪ Die Tote Stadt「死の都」
作曲:Erich Wolfgang Korngold(コルンゴルト1897~1957)
内容:ベルギー象徴主義の詩人G. Rodenbachs(1855~1898)の小説「死都ブルージュ」を基に、作曲者自身とその父ユリウスがPaul Schottという名前に変名して、自由に翻案して台本を書いた。作曲者はまだ23歳だったが、第一次世界大戦で大きな痛手を負った初演当時の聴衆が、≪喪失感からの克服≫という主題に共感を持ち大人気となる。全3幕 ドイツ語
あらすじ
第1幕 19世紀末のブルージュ。愛する亡き妻マリーを忘れられないパウル(テノール)は、妻の遺品に囲まれた「思い出の部屋」に引きこもり悲しみの中に生きている。彼は、やってきた友人のフランク(バリトン)に、「マリーは生きている」と幻想の世界を語り始め、一方、フランクは「死者は戻らないのだから早く立ち直るように」と忠告する。パウルはフランクに、街でマリーに瓜二つの女性に出会って家に招待したと話し、フランクと入れ替わりにその女性が訪ねてくる。その女性は、リールからやってきた踊り子マリエッタ(ソプラノ、マリー役と一人二役)で、パウルは 彼女の歌う有名なマリエッタの唄[私に残された幸せ]や魅惑的な踊りに魅了される。マイヤーベーアのオペラ「悪魔のロベール」のリハーサルに行くためにマリエッタは退出し、ひとり残ったパウルは、亡き妻マリーへの愛とマリエッタへの欲望の間で苦悩して、マリーの亡霊を見る。パウルはマリーに忠誠を誓うが、今度はマリエッタの幻を見るのだった。
第2幕 幻想の中で、パウルはマリエッタを追いかけブルージュの運河沿いをさまよっている。パウルは、彼もまたマリエッタの魅力の虜となっていたフランクと出くわし、互いに恋敵であることを知る。マリエッタの一座が現れ、物陰に潜んだパウルの前で陽気に騒ぐ。興に乗ったマリエッタは、オペラ「悪魔のロベール」の尼僧が生き返って男たちを誘惑する場面を演じるが、死者の復活を馬鹿にしたと感じたパウルは怒って飛び出していく。マリエッタと二人きりになったパウルは、自分が愛するのは亡き妻マリーであって、面影だけ似ている君ではないと伝える。マリエッタは悔しさのあまりパウルを誘惑し、彼はその魅力に陥落してしまう。
第3幕 翌朝、パウルは亡き妻と過ごした家でマリエッタと一夜を過ごしたことを後悔している。窓の外では聖人の祝日の行列が通り、マリエッタはパウルの敬虔な信仰心を茶化し、妻の遺品に囲まれた生活を嘲笑する。怒ったパウルは、マリーの遺髪を首に巻いて踊るマリエッタを絞め殺してしまう。パウルがふと気が付くと、マリエッタの姿はない。全ては幻想だったのだ。そこへ、家政婦のブリギッタ(メゾソプラノ)が「お客様が忘れ物の日傘とバラの花を取りに来た」とマリエッタを連れて来て、続いて友人フランクが訪れる。パウルは、死者への想いと決別して、友人と共に死の都ブルージュを立ち去ることを決意し幕となる。