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♪ Götterdämmerung「神々の黄昏」

by hidepost, le 28 oct 2024

作曲:Richard Wagner(ワーグナー1813~1883)

内容:昨シーズンから2年間にわたる、全4夜の合計約15時間からなる超大作«ニーベルングの指輪»の最終夜。ワーグナーが、Jacob Grimmが出版した『ドイツ神話』からこの指輪4部作の元となる『ニーベルンゲンの歌』などの神話を知ったのは1843年で、彼が最初に台本草案を書き始めた1848年から、この長大なオペラの完成には26年を要した。

ワーグナーは1854年に序夜「ラインの黄金」、1856年に第1夜「ワルキューレ」、1871年に第2夜「ジークフリート」を完成させ、今回の最も長大な「神々の黄昏」は、前作「ジークフリート」の作曲期間と一部重なり1874年に完成された。これまでの全モチーフが豪華に織り込まれたゴブラン織りの様で、四部作中、この最終夜のみに合唱(男声のみ)が登場する。また、プロローグと第1幕の間に休止はなく、各場は管弦楽の間奏によって切れ目なく演奏される。 プロローグ付き 全3幕11場 ドイツ語

序夜「ラインの黄金」と第1夜「ワルキューレ」のあらすじは、プチポワサイト内のオペラあらすじの2023-24年に、第2夜「ジークフリート」は2024-25年にあります。

あらすじ:

序幕 ワルキューレの岩山

「覚醒の動機」による短い序奏で幕が開く。

[知の女神]エルダの娘たち、[運命の女神]である3人のノルンが登場し、運命の糸を紡ぎながらそれぞれに「過去」、「現在」、「未来」を語る。

第1のノルン(アルト)は、神々の長ヴォータンが、片目を代償に世界樹トネリコの樹の枝から1本の槍を作ったためにその大木は枯れてしまったと「ラインの黄金」以前の出来事を語り、第2のノルン(メゾソプラノ)は、英雄ジークフリートが、そのヴォータンの槍を叩き折った「ジークフリート」での出来事、第3のノルン(ソプラノ)は、ヴォータンがその大木の枯れ枝をヴァルハラ神殿の周りに積み上げて終焉の準備をしていると、神々の終末を予感する未来を語る。やがてノルンたちが操る運命の糸が切れ、3人は大地の下の母エルダの元に消えてゆく。

管弦楽による「夜明け」の音楽で「ブリュンヒルデの愛の動機」が繰り返され、神々の長ヴォータンの愛娘ブリュンヒルデ(ソプラノ)と、彼女の夫の英雄ジークフリート(テノール)が登場する。ブリュンヒルデは、ジークフリートに神々の古代文字の知識を全てを与えて立派な英雄に仕立て上げ、今、彼は新たな武者修行に旅立つのだ。ジークフリートは、愛の証として世界を支配する力を持つ«ニーベルングの指環»を彼女に預け、ブリュンヒルデは愛馬グラーネを彼に贈り、2人は変わらぬ愛を誓い合う。管弦楽による「ジークフリートのラインへの旅(ライン騎行)」が第1幕への間奏曲となる。

第1幕 

第1場 ライン河のほとりにあるギビフング族の長ギービヒ家の館の大広間

ギービヒ家の当主グンター(バリトン)とその妹グートルーネ(ソプラノ)、グンターの異父兄弟でアルベリヒの息子ハーゲン(バス)が、ギービヒ家の繁栄のための案を考えている。父がニーベルング族のアルべリヒで陰謀を企んでいるハーゲンは、炎に囲まれた岩山の美女ブリュンヒルデをグンターの妻とし、英雄ジークフリートをグートルーネの夫に迎えるように提案する。そのためには自分の持っている過去を忘れる薬と惚れ薬をジークフリートに飲ませるという計略を考え出し、グンターとグートルーネは同意する。そこへジークフリートの角笛が聞こえてくる。小舟でライン川をさかのぼるジークフリートにハーゲンが呼びかけ、館に招く。

第2場

ギービヒ家の館に入ったジークフリートは、戦いか友好かどちらかを選べと迫る。グンターは歓迎の意を表し「祖先から相続した全てを捧げて貴方の臣下となる」と申し出る。ジークフリートが「自分は何も持たないが、この体と剣をあなたのために役立てたい」と言うので、ハーゲンは「貴方はニーベルングの財宝の持ち主では?」と尋ね、彼は「財宝はこれ以外全て大蛇の洞窟に置いてきた」と答えて鉄鋼細工を見せる。ハーゲンは、それは«隠れ兜»だと使い方を教え「«指輪»はどうしたのだ?」と尋ね、ジークフリートは「指輪はある女性が持っている」と答える。グートルーネが、忘れ薬と惚れ薬の入った飲み物をジークフリートに手渡す。飲んだジークフリートは、たちまち最愛の妻ブリュンヒルデのことを忘れ、目の前のグートルーネに夢中になってしまう。グンターがブリュンヒルデを妻として欲していると聞くと、ジークフリートは「貴方の妹グートルーネを私の妻にしてくれるなら、私はこの«隠れ兜»で貴方の姿に化けてブリュンヒルデをここに連れて来ましょう」と提案し、互いに杯に血を注ぎ義兄弟の盟約を誓い、ただちに二人は出発する。グートルーネは部屋に下がり、見張りのためにひとり残ったハーゲンは、ジークフリートやグンターらへの憎悪を示し、モノローグ「ハーゲンの見張り」で、すべては世界支配の力を持つ«ニーベルングの指環»を奪うための策略であることを語る。

第3場 ワルキューレの岩山

岩山で独り«指輪»を眺めて物思いにふけるブリュンヒルデのもとへ、突然妹ヴァルトラウテ(アルト)が訪ねてくる。ヴァルトラウテは姉に「神々の長ヴォータンは、長い間放浪者として世界を彷徨し、ある日ジークフリートに折られた槍を持ってヴァルハラ神殿に帰ってきた。それ以降は、世界樹(せかいじゅ=世界の中心に生える神聖な巨大な樹)のトネリコの樹を切り倒し、城の周りにその薪を高く積み上げさせて、«若返りの林檎»も口にせず気力を失い、神々の終焉を準備している」とヴァルハラ神殿のただならない様子を伝え、神々の窮地を救うために«指環»をラインの乙女たちに返すようブリュンヒルデに懇願する。しかし、ブリュンヒルデはジークフリートとの愛の証を手放すつもりはないとして拒絶する。ヴァルトラウテは再三懇願するが、絶望して天馬に乗って消え去る。そこへ«隠れ兜»の効力でグンターの姿になりすましたジークフリートが現れ、「私はギービヒ家のグンターで貴女は私の妻になるのだ」と静かに伝える。ブリュンヒルデは悲鳴を上げて抵抗し、貞節を守る効力のある«指輪»をかざすが、本当の夫ジークフリートには効かない。ジークフリートは力ずくで従わせ、ブリュンヒルデから«指環»を奪い、彼の銘剣«ノートゥング»に「グンターの妻と私との間の隔てとなれ」と叫び彼女の寝室に入って行く。

第2幕

「闇の領域」を表す、暗く重々しい序奏。

第1場 ライン河畔、ギービヒ家の館の前

うたたねしているハーゲンの前に、父でニーベルング族のアルベリヒが現れる。アルベリヒは「ヴォータンは神々の終末の日を待つばかり、«指輪»を持つジークフリートはその効力を知らず利用しないので、わしが«指輪»にかけた呪いも通じない」と語り、「ラインの娘たちに«指環»を返すことになれば永遠に手に入れることはできなくなるので、ジークフリートを殺し«指環»を奪還してわしの復讐をせよ」と息子ハーゲンに命じて姿を消す。ハーゲンは心配無用だと答える。

第2場

夜明けとともにジークフリートが、ギービヒ家の館に戻ってくる。ジークフリートはハーゲンに、ブリュンヒルデへの「求婚」がうまくいったこと、遅れてグンターが彼女を船で連れて帰ってくることを告げる。グートルーネはジークフリートとブリュンヒルデが一夜をともにしたと聞いて嫉妬するが、ジークフリートは「二人の間にはこの剣が横たわっていた」と言い訳する。

第3場

グートルーネが女たち、ハーゲンが男たちを呼び集め、四部作を通じて初めて合唱が登場する。集まってきたギービヒ家の家臣たちに、ハーゲンは冗談を飛ばしながら婚礼のための招集であることを告げ、これを聞いた家臣たちは陽気に歌い出す。

第4場

グンターとブリュンヒルデが館に到着し、ジークフリートとグートルーネや家臣たちが出迎え、グンターは「今日は自分とブリュンヒルデ、ジークフリートとグートルーネの2組の結婚式だ」と発表する。ブリュンヒルデは、愛するジークフリートを見つけ愕然とし、さらに、彼が自分のことを全く知らないかの様な態度でグートルーネと結婚すると言うので、気を失いかける。彼女を支えるジークフリートの指に、グンターに奪われたと思っていた«指環»がはめられていることに気づいたブリュンヒルデは、彼が自分を裏切って、指輪を奪ったのはグンターに変装したジークフリートだったのだと糾弾する。ジークフリートは、この指輪は大蛇を討った時の報酬だと昔の記憶を辿るが、ブリュンヒルデは「裏切りだ。これが神々の聖なる判断なのか。私も私を裏切った男も打ち砕くがよい。私が結婚したのはこの男です」と言い、ジークフリートを指差す。ジークフリートは、自分は義兄弟の誓いを守り昨晩は愛剣«ノートゥング»が2人の間を隔てていたと主張するが、グンターとグートルーネは、誓いを立てるように迫る。過去を忘れたままのジークフリートは、ハーゲンが突き出した誓いの槍に手を当て、自身の潔白を宣誓する。ブリュンヒルデは、彼を押しのけ「グンターとの義兄弟の誓いを破ったジークフリートはこの槍に殺されるべきだ」と宣誓する。一同騒然となる中、ジークフリートは「もしかしたら«隠れ兜»が半分しか被さっていなかったのかも知れない。」とグンターの耳元で伝え、グートルーネの腰に手をかけ家臣たちを従えて、婚礼の宴会にと館へ引き上げる。

第5場

後に残ったブリュンヒルデ、グンター、ハーゲン。「一体何が起こったのか。私の知識は総てジークフリートに与えてしまったので、もはや私の知力ではこの企みの謎は解けない」と嘆くブリュンヒルデに、ハーゲンがにじり寄って「義兄弟の誓いを偽誓した罪は許されない。復讐は私がする」と言う。ジークフリートへの復讐心にとりつかれたブリュンヒルデは「私が彼に秘術をかけたので彼は不死身だ。ただし、敵に背を見せない男と信じ、背中には秘術をかけなかった」とハーゲンに告げる。ハーゲンは、グンターに失った面目を取り戻すためには、ジークフリートの死しかないとして、彼を納得させる。グンターは、ジークフリートとは兄弟の契りを交わしたことや、グートルーネの心情を思いやって躊躇するが、ハーゲンに「グートルーネには狩で猪に殺されたと言えばよい」と押し切られて同意する。ジークフリートを狩りに呼び出して復讐を誓うブリュンヒルデとグンター、2人を利用して«指環»を奪おうとするハーゲンによる三重唱。幕切れでは、館からジークフリートとグートルーネの婚礼の行列が繰り出してくる。

第3幕

「角笛の動機」に「苦痛の動機」が応える不吉な序奏。

第1場 ライン河のほとり、自然のままの森と岩が入り組んだ谷あい

翌日。ライン河の乙女たちが、ラインの黄金が失われてしまったことを嘆いている。狩りの獲物を見失ったジークフリートが現れ、3人のラインの乙女たち(ソプラノ、メゾソプラノ、アルト)が、彼をからかう。«指環»が欲しいと言う乙女たちに、一度は渡す気になるジークフリートだったが、乙女たちが真面目になって「«指環»には呪いがかかっていて、これを持つ者は必ず殺されるのでライン川に捨てなさい」と警告するので、反発心から翻意する。乙女たちは、今日のうちにも«指環»はブリュンヒルデが相続することになるだろうと予言して水中に消える。

第2場

グンター、ハーゲンらの一行がジークフリートと合流し食事と酒盛りが始まる。ハーゲンがジークフリートに「小鳥の歌を理解できるそうだな?」と持ちかけ、彼の生い立ちを尋ねる。ジークフリートは「ミーメに育てられ、愛剣«ノートゥング»を造って大蛇を退治し、その血を浴びたら小鳥の言葉が解るようになり、洞窟にあった«指環»と«隠れ兜»を取ってブリュンヒルデのいる岩山に向かった」と自分の身の上を語り始める。その時ハーゲンは、記憶を呼び戻す薬を酒に入れてジークフリートにすすめる。酒を飲んだジークフリートは、記憶を取り戻し、炎を越えて接吻したブリュンヒルデとの出会いを一同に明かしてしまう。驚愕するグンター。ハーゲンは間髪を入れず、飛び去る2羽の大ガラス(ヴォータンの使い)に「あのカラスも理解できるか?」とジークフリートの注意を向けさせ、ジークフリートが後ろを振り向いたところ、その背中に槍を突き立てる。ジークフリートは槍を振り上げ反撃しようとするが力尽き斃れる。「なんということをしたのだ!」と責めるグンターに、ハーゲンは「偽誓を罰したのだ」とうそぶく。瀕死のジークフリートは、「聖なる花嫁ブリュンヒルデよ」と彼女が自分の接吻で目覚めた時を回想し、別れを告げ息絶える。家臣たちは、彼の亡骸を高く上げ運び、第3場への間奏曲、有名な「ジークフリートの葬送行進曲」となる。

第3場 ギービヒ家の館の広間

館で待つグートルーネは、胸騒ぎがして部屋を出て、笑い声が聞こえたと思いブリュンヒルデを探すが彼女は部屋にいない。グンター、ハーゲンらが、ジークフリートの遺骸と共にギービヒの館に帰ってくる。「お前の夫は猪の犠牲になったのだ」と説明を受けるが、グートルーネはグンターを責め、彼はハーゲンの犯行だと明かす。「わしは偽誓を罰したのだ」と昂然と開き直ったハーゲンは、«指環»は自分のものだと主張する。怒ったグンターは「妹グートルーネの相続物である指環に手を触れるな」と剣を抜き決闘となるが、ハーゲンはグンターに襲いかかって倒す。ハーゲンがジークフリートの亡骸から指環を取ろうとすると、ジークフリートの手が威嚇するように持ち上がってこれを拒み、一同は恐怖に凍り付いたようになる。そこへ、館の奥からブリュンヒルデが威厳ある姿で登場する。グートルーネがブリュンヒルデを非難するが、ブリュンヒルデは「私が彼の妻なのだ」と静かに言い、恥じたグートルーネはグンターの遺体に倒れ伏す。

音楽が「ブリュンヒルデの自己犠牲」となり、ラインの乙女たちから全てを聞かされたブリュンヒルデは、ギービヒ家の家臣たちに河畔に薪を積み上げるよう命じ、ジークフリートの亡骸を薪の山の上に運ばせる。ブリュンヒルデは「この人ほど忠実で純真に愛した人はなく、この人ほど総ての誓いも愛も裏切った人もいなかった。ヴォータンよ、貴方は自分の陥るべき呪いへ彼を陥れたのだ。神よ満足されよ」とジークフリートを称え、«指環»を自分の指にはめ、ラインの乙女たちに返す決意を語り「私と一緒に炎に焼かれラインの川底に戻れ」と絶唱する。積まれた薪の山に松明が投じられ、炎が燃え上がると、ブリュンヒルデは愛馬グラーネにまたがり、炎の中に飛び込む。

ギービヒの館は炎に包まれて崩れ落ち、氾濫して大洪水となったライン川から、ラインの乙女たちが現れ«指輪»を取り、これを見たハーゲンは飛び込むが、乙女たちに水中深く引き込まれる。乙女の1人フロースヒルデ(アルト)が«指環»を高くかざしている姿が見え、彼女たちは泳ぎ去る。炎は天上に広がり、神々と勇士たちが居並ぶヴァルハラ神殿が炎上する。神々の黄昏は、その最後の光を残して消えて行き「愛の救済の動機」による終結となり、この長大なオペラは幕となる。