♪ Lulu「ルル」
作曲:Alban Berg(ベルク1885~1935)
内容:作曲者ベルクが、戯曲家F. Wedekindsの「地霊」と「パンドラの箱」の2つの戯曲を原作の台詞を生かしながらカットし、繋ぎ合せて台本を書き作曲を始めたが、第3幕が未完のまま病死してしまった。初演時のオリジナル版にベルクが死の前年に発表した「ルル交響組曲」の最後の2楽章に3幕の台詞を入れた形で2012年にモネ劇場で上演したものの再演。 全3幕 ドイツ語
あらすじ
プロローグ:サーカスの猛獣使いが、これから登場する人物を動物にたとえて紹介する。彼は最後にピエロ姿のルルを「これは蛇です。人を惑わし、毒殺もします」と紹介して幕を上げる。
第1幕 第1場
ルルは貧民街にいたところを、新聞の編集長シェーン博士に拾われた。シェーン博士は、愛人関係を続けながらも、彼女を初老の衛生顧問官と結婚させている。ピ エロ姿のルル(ソプラノ)が、画家(テノール)のモデルとなっていて、シェーン博士(バリトン)がそれを眺めている。シェーン博士の息子で、やはりルルに 憧れている作曲家のアルヴァ(テノール)が現れ、親子は一緒に帰る。ルルに魅了されていた画家は、2人になるとルルに言い寄り、そこへルルの夫の衛生顧問官(語り役)が、ルルを迎えにやって来る。ドアに鍵がかかっているのをこじ開けて、その場の光景を見た彼は、心臓麻痺を起こして死んでしまう。
第2場
ルルは死んだ夫の遺産を持って画家と結婚し、画家も絵が売れて、2人は良い暮らしをしている。ルルは先程届いたシェーン博士の婚約発表通知を読んで、心が 波立っている。ルルの父親という触れ込みの老人シゴルヒ(バス)が現れ、ルルからお金を無心して帰る。シェーン博士が現れ「自分は今回正式に結婚するのだ から、邪魔をしないでくれ」とルルに頼むが、2人はいさかいを始める。博士は、画家にルルの過去を暴露(ばくろ)し、画家はあまりのショックに別室で自殺 する。アルヴァが「パリで革命が起きた」と告げに来て、3人は画家の死を確認する。警察が到着する中、ルルが「今度こそ私と結婚するでしょうね」と博士に 迫る。
第3場
ルルはアルヴァの作曲したバレエに踊り子として出演している。彼女は舞台か らシェーン博士が婚約者と観に来ているのを見つけ、失神して楽屋に運ばれてくる。アルヴァや舞台監督(バス)、シェーン博士も楽屋に駆けつけ、ルルと博士 はけんかを始める。博士は、どうしても逃れられないルルの魅力に負けて、婚約者に婚約解消を告げる手紙を書かされてしまう。
第2幕 第1場
ルルは念願かなってシェーン博士の妻になっている。しかし相変わらずルルの周りには彼女を熱愛する、同性愛者のゲシュヴィッツ伯爵令嬢(メゾソプラノ)、老 人シゴルヒ、力技師(バス)、彼に連れてこられた早熟な中学生(アルト)といった怪しげな人間たちがいて、シェーン博士が留守だと知って集まって来る。召使いがアルヴァの来訪を告げ、皆はそれぞれ身を隠し、ルルとアルヴァは食事を始める。帰ってきたシェーン博士はその光景を見て物陰から2人を観察するが、 それを知らない息子アルヴァがついにルルに愛を告白するので、博士は「息子までが」と疑念を募らせる。カーテンに隠れていた力技師が、博士がいることを2 人に伝えるために姿を現し、アルヴァはピストルを持った父に動転する。博士とルルはいさかいを始め、ルルは「私のために人が死のうと、私の価値は下がらな い」とアリアを歌い、シェーン博士のピストルで彼に向かって発砲する。ルルは倒れたシェーン博士を前にして、息子のアルヴァに「私を法廷には出さないで」 と頼むが、ベルの音が警官の到着を告げる。
第2場
間奏曲中の無声映画で、その後の1年余りの出来事-ルルの逮捕と投獄、ゲシュヴィッツ伯爵令嬢がルルを脱獄させるためにコレラに罹り、ルルにも感染させて2人とも隔離病棟に移されたこと-が説明される。先に退院した伯爵令嬢が、隔離病棟のルルと入れ替わって彼女を脱出させることに成功し、ルルはシゴルヒに連れられて戻ってくる。集まった一同は今後どうするかと相談し、ルルとアルヴァは2年越しの愛を確認し合う。ルルはアルヴァと逃走することを決め、アルヴァはルルを賛美してアリアを歌う。
第3幕
逃亡先のパリで食い詰めたルルは、ロンドンに移り、ゲシュヴィッツ伯爵令嬢と街の女に身を落として屋根裏部屋で暮らしている。アルヴァも一緒だったが、彼は ルルの客の手にかかって殺されてしまう。ルルが新しい客-娼婦殺しで有名な切り裂きジャック(語り役)-を連れてきて、ルルを守ろうとしたゲシュビッツ伯爵令嬢が刺されて、残されたルルも殺されてしまう。瀕死(ひんし)のゲシュヴィッツ伯爵令嬢が「ルル。私の天使。もう1度姿を見せて」と歌う中、幕が下りる。