The tale of Tsar Saltan「サルタン皇帝の物語」
作曲:Nikolay Rimsky-Korsakov(リムスキー・コルサコフ1844~1908)
内容:1900年ロシアの文豪プーシキンの生誕100年記念に、彼の詩を基にV. Belskyが台本を書いた、作曲者11番目のオペラ。正式な題は「皇帝サルタンと、その息子で栄えある逞しい勇者グヴィドン・サルタノヴィチと、美しい白鳥の王女のおとぎ話」で、子どもの絵本のような世界を親しみやすく、管弦楽法のマジックとロシア民謡をふんだんに取り入れた、子どもに見せたい美しい作品。 プロローグ付き全4幕 ロシア語
あらすじ
<プロローグ>
冬の夜、3人の姉妹が、窓辺で糸を紡ぎながら「もし自分がサルタン皇帝の花嫁になれたなら」と夢を語っている。長女(ソプラノ)は、「全ての人に豪華な宴会で料理してあげる」と言い、次女(メゾソプラノ)は、「世界中の人に亜麻布を織ってあげる」と言うが、末娘(ソプラノ)は、「皇帝のために立派な勇士を産むわ」と言う。隠れてそれを聞いていたサルタン皇帝(バス)が現れて、末娘に「妃になって立派な勇士を産んでおくれ」と、末娘を妃に選ぶ。皇帝は、2人の姉に「1人は料理女、もう1人は機織り女になるのだ」と言い、母親(メゾソプラノ)も一緒に宮殿に連れてゆくが、末娘に仕えることになって嫉妬で我慢できない姉二人と母親は、末娘が結婚後に子どもを産んだら、戦争に行っている皇帝に「子どもは化け物だった」と報告する仕返しを企てる。
第1幕
オーケストラの間奏曲がファンファーレで、サルタン皇帝の戦争への出征を告げる。末娘の皇后がめでたくグヴィドン王子を出産したので、宮殿では女たちが子守歌を歌うが、意地悪な母親はおぞましい歌詞を低い声で歌う。母親たちに、王子出産の知らせの手紙をすり替えられたことを知らない皇后は、皇帝からの返事の便りがないことに不安が募っていて、皇帝の道化師(バス)が気晴らしをさせようとする。料理女の長女は食事を出し、機織り女の次女は機織りをし、年取った男が道化師とやり取りする。王子が目覚めて乳母が歌うが、グヴィドン王子は走り始めるので人々はその非凡さに感嘆する。サルタン皇帝の使者(バリトン)が、皇帝の返事を持って到着するが、「誕生した王子は化け物だった」という偽の手紙に騙された皇帝からの返事には「皇后と王子を樽に詰めて、海に流せ」と書かれている。皇后は「皇帝はまだ自分の息子のグヴィドン王子を見てもいないのに」と悲嘆にくれるが、廷臣たちは皇帝の命に逆らう術もなく、皇后とグビィドン王子は海に流される。
第2幕
2人を入れた樽は小さな島に流れ着き、グビィドン王子(テノール)は、嘆き悲しむ母の皇后を励ましながら成長して青年になる。ある日勇敢な王子は、狩の途中で襲われている白鳥(ソプラノ)を救うためにハゲタカと戦い、救われた白鳥は、王子に感謝して恩返しを約束する。グビィドン王子は「なぜサルタン皇帝は自分たちにこんなひどい仕打ちをしたのだろう」と、自分の出生を母に尋ねて眠りにつく。夜が明けると、白鳥の恩返しによって、王子と皇后の前に豊かな都が現れ、熱狂的な島民によって、グビィドン王子はその島の王に迎えられる。
第3幕
グビィドン王子は、自分の故郷を懐かしみ、父サルタン皇帝に会いたくなり、白鳥に助けを求める。白鳥は王子を熊蜂の姿に変え、サルタン王国に向かう船に乗ってゆくようにと勧める。父に会いたい王子が、気付かれないように熊蜂になって会いに行く音楽が有名な≪熊蜂の飛行≫。
サルタンの王宮では、3人の船乗り(テノール、バス、バリトン)が、熊蜂になったグヴィドン王子を伴ってサルタン皇帝を尋ね、皇帝の求めに応じて、それぞれに自分が見聞した魔法の島の3つの奇跡の話を聞かせる。1つ目の奇跡は、砂漠だったある島が素晴らしい都になって、勇敢で美しいグヴィドンという名の王子が平和に島を治めていること。2つ目はその島のリスが胡桃を噛むと黄金に変わること。3つ目は海が33人の勇士を運んでくること。サルタン皇帝は、奇跡やグヴィドン王子の話を聞いてその島に興味を持ち「その島に行く」というが、2人の姉と母親は自分たちのついた嘘を必死に隠そうとして、皇帝を思いとどまらせる。それを見ていた熊蜂のグヴィドン王子は、2人の姉と母親を刺して大騒ぎとなる。
第4幕
魔法の島に戻ったグヴィドン王子が、乙女への憧れと愛を歌うと、白鳥が現れ、かけられていた魔法が解けて、白鳥は美しい王女の姿に変わる。二人は愛を誓い合い、グヴィドン王子の母は、二人の結婚を祝福する。オーケストラの間奏曲≪3つの奇跡≫
サルタン皇帝の船が近づき、グヴィドン王子は、サルタン皇帝とその一行を迎える。グヴィドン王子の求めで、皇帝は過去を語り、愛していた皇后に対して無分別な待遇をしてしまった後悔を話す。そして、船乗りから聞いた魔法の島の3つの奇跡を見たサルタン皇帝は、白鳥の王女に、「私の失った妃に会わせておくれ」と頼み、末娘の皇后が姿を現す。二人は再会を喜び歌い、皇后はグヴィドン王子が、皇帝の実の息子であることを明かす。2人の姉と母親は許しを乞い、グヴィドン王子と皇后の頼みでサルタン皇帝も彼らを許し、皆がグヴィドン王子と白鳥の王女の結婚を盛大に祝う中、幕となる。