♪ Siegfried「ジークフリート」
作曲:Richard Wagner(ワーグナー1813~1883)
チケット発売開始日:6月26日(すぐに売り切れますのでお早めにお求めください)
内容:昨シーズンから2年間にわたる、全4夜の合計約15時間からなる超大作«ニーベルングの指輪»の第3夜。ワーグナーは1854年に序夜「ラインの黄金」、1856年に第1夜「ワルキューレ」を完成させるが、最初の妻との離婚や、この超大作の構想のさらなる拡大によって完成の目途が付かず、上演・出版のあてもなく、第3作目である本作品の作曲中におよそ10年間中断し、その間「トリスタンとイゾルデ」などの名曲を完成する。結局1864年にバイエルン王ルードヴィヒ2世の経済的援助を得て、王のこの4部作への期待に支えられ1871年に完成。第1幕2場での神々の長ヴォータン(さすらい人と名乗る)と、ミーメ(怖れを知らぬ若者ジークフリートを養育する)との謎かけによって前2作のあらすじが語られる。この4部作の主人公英雄ジークフリートが初めて登場し、次の悲劇の重圧を前に、娯楽性を持つ陽性な作品。なお昨年の演出家から代わり、今年の後半2夜はPierre Audi氏による演出となる。 全3幕 ドイツ語
前2作の序夜「ラインの黄金」と第1夜「ワルキューレ」のあらすじは、プチポワサイト内モネ情報のオペラあらすじ2023-2024年にあります。
あらすじ
第1幕 森の中の洞窟
「思案の動機」、「財宝の動機」、「ニーベルング族の動機」、「苦痛の動機」などが短い序奏で演奏される。
第1場
ニーベルング小人族のミーメ(テノール)が、世界を支配する力を持つ≪ニーベルングの指環≫を手に入れるため、自分が養育する怪力のジークフリートに持たせる魂胆で剣を鍛えている。そこへ森から熊を連れてジークフリート(テノール)が陽気に戻って、熊に慌てふためくミーメを嘲笑し、怒ったミーメは«養育の歌»で、お前を育てた自分にこのような仕打ちは恩知らずだと愚痴をこぼす。「俺はお前に似ていないが、俺の両親は誰なんだ」と執拗に訊くジークフリートに、ミーメは仕方なく彼の本当の親について教える。母親のジークリンデは森に逃げた後、洞窟でお前を難産で産み死んだ。父親は戦死したが、ここに最後の戦いで使った形見の剣の破片がある、と剣の破片を見せる。ジークフリートは、自分はその剣を持って世の中に出て行くから、今日中にその剣を元通りに鍛え直せとミーメに命じ、また森へ遊びに行く。
第2場
困り果てたミーメのところへ、「さすらい人」と名乗るマントを着て片目を隠し槍を持った旅人(バス、神々の長ヴォータン)が「旅に疲れた、休ませてくれ」と入って来る。さすらい人はミーメに、首をかけて知恵比べをしようと言い、早く厄介払いしたいミーメはこれを受ける。ミーメの第1の質問:地下に住む種族は?「ニーベルング族で、かつてアルベリヒがラインの乙女から奪った魔法の指輪の力で世界を支配しようとした」。第2の質問:地上に住む種族は?「巨人族がはびこって魔法の指輪を手にしたが、兄弟喧嘩の末に弟が兄を殺し、今は弟が大蛇になって洞窟でその指輪を守っている」。第3の質問:天上の世界は?「天上には神々の住むワルハラ神殿があり、神々の長ヴォータンが世界を支配している」。さすらい人が3問とも正解し、彼が槍で地面を付くと雷鳴がとどろくので、ミーメは彼の正体が神々の長ヴォータンであることに気づく。今度はさすらい人が3つの問いを出す。ヴォータンの第1の質問:ヴォータンが一番愛している種族は?「ヴェルズング族で、その種族で最も強い男ジークムントは妹のジークリンデとの間に息子ジークフリートを授かった」。第2の質問:指輪を守る大蛇になった巨人族を斃(たお)すためにジークフリートにどんな剣を持たせねばならないか?「その剣はヴォータンがかつて砕いた≪銘剣ノートゥング≫だ」。2つまでは答えられたミーメだったが、3つ目の質問:≪銘剣ノートゥング≫を鍛え直せるのは誰か?には答えられず絶望する。さすらい人は「剣を鍛え直せるのは「怖れ」を知らぬ若者だけだ」と予言し、お前の首はその若者に預けるといって立ち去る。
第3場
ミーメは、森にキラキラ輝く光を見て大蛇になった巨人族のファーフナーが来たと怯えて床下に隠れる。ジークフリートが森から戻り「鍛冶屋はどこだ?剣は直ったか」と尋ねるが、ミーメは「この剣を直せるのは怖れを知らぬ者だけで、わしには知恵があり過ぎるのだ」と答えながら、このジークフリートに「怖れ」というものを教えたら、わしの首は安全だと思いつき「怖れ」を教えようとするが、彼には一向に理解できない。ミーメは「大蛇になったファーフナーの洞窟に行けば「怖れ」を教えてもらえるだろう」と諦める。ジークフリートは、つまらない事ばかり言って剣を直さないミーメに業を煮やし、自分が父の剣を鍛え直すと、«溶解の歌ノートゥング!»を歌って剣を溶かし、«鍛冶の歌 打てよハンマー»で見事に剣を鍛え直す。その間にミーメは、ジークフリートが大蛇を殺したら、自分が指輪を手に入れるために彼を殺そうと毒汁を煮始める。ついに≪銘剣ノートゥング≫は鍛え直され、ジークフリートが鉄床を真っ二つに割って見せるので、ミーメは驚愕し椅子から転がり落ちる。
第2幕 序奏で「巨人の動機」、「大蛇の動機」、「呪いの動機」、「怨念の動機」が演奏される。
第1場
場所は、巨人族のファーフナーが大蛇となってニーベルングの宝の指輪や隠れ頭巾を守っている森深くにある洞窟の前。ミーメの兄でニーベルング小人族のアルベリヒ(バス)が、再び指輪を取り戻そうと様子を伺い「大蛇を殺そうとする若者が近づいて来ている」と呟く。そこへさすらい人が現れ、アルベリヒは、それが神々の長ヴォータンだと見抜き「お前は俺から奪った魔法の指輪を、ワルハラ神殿建築の代金として巨人族に契約で支払ったのだから、指輪を再び手にすることはできない。俺が、世界を支配する力を持つその指輪を再び取り戻せば、お前たちの神殿に突撃して俺が世界を支配するのだ」と脅(おど)す。ヴォータンは嘲笑し「今財宝を狙っているのはわしではなくお前の弟ミーメだ。お前が大蛇に命が危ないと忠告してやったら財宝を分けてもらえるかも知れないぞ」と、大蛇ファーフナーを起こす。「眠りを邪魔するのは誰だと」ファーフナー(バス)が目覚め、アルベリヒは「お前を殺そうと強い勇士がやって来るが、お前が黄金の指輪さえくれれば代わりに戦ってやる」と言うが、大蛇は「自分の物は自分で守る」とあくびをして再び眠る。ヴォータンは「今度はお前の弟とやり合うのだな」と言い残して去り、アルベリヒも「いつか神々の一族の滅亡を見届けてやる」と言い消える。
第2場
ミーメが「怖れ」を教えるためにジークフリートを連れて洞窟の前に現れ、大蛇の恐ろしさを説明するが、彼は全く怖がらない。1人残されたジークフリートは、父母への想いに浸って«森のささやきの音楽»、小鳥の鳴き声をまねて葦笛を吹くがうまくゆかない。今度は得意の角笛を吹くと、大蛇が目を覚まし彼を飲み込もうとして戦いになる。≪銘剣ノートゥング≫は大蛇の心臓を貫き、大蛇は「この戦いを仕向けた者がお前を殺そうとしているぞ」とジークフリートに忠告し息絶える。ジークフリートが指に付いたファーフナー血をなめると、突然小鳥のさえずりが理解できるようになり、「洞窟の中のニーベルングの宝の黄金の指輪と隠れ頭巾を見つけると良い」と告げる小鳥(ソプラノ)に礼を言って洞窟に入る。
第3場
ミーメとアルベリヒ兄弟が洞窟前に現れ宝の所有をめぐって口論し、ミーメが折衷案として「指輪は兄貴が自分は隠れ頭巾を」と提案するが、アルベリヒは納得しない。そこへジークフリートが、何の意味を持つのかは分からない指輪と頭巾を持って出てくるので、兄弟は隠れる。小鳥が「ミーメに気を付けて」と歌い、ファーフナーからも忠告されていたジークフリートは、現れたミーメが毒薬を飲ませようとするのを見抜いて彼を斬り殺し、岩陰からアルベリヒの笑い声が聞こる。再び小鳥の声が、岩山で炎に包まれて眠っているブリュンヒルデのことを告げ「彼女を目覚めさせればお前の花嫁となる」と教える。ジークフリートは小鳥に「私に彼女を目覚めさせられるだろうか」と尋ね、「怖れを知らぬ者だけができる」と答える小鳥に、「今日大蛇も私に怖れを教えられなかったのだから、それは私だ」と叫び、小鳥に導かれてワルキューレの岩山へ出発する。
第3幕 序奏:早いテンポで切迫した「騎行の動機」と「生成の動機」による序奏。
第1場
激しい嵐の夜、岩山の麓の荒野、さすらい人の姿のヴォータンが、知の女神エルダ(アルト)を「お前に教えてもらいたいことがある」と呼び出す。エルダが「世界の運命については、運命の糸を紡ぐノルンや私が貴方のために産んだ娘に尋ねなさい」と答えると、ヴォータンは「その娘ブリュンヒルデは大胆で賢いが、わしに逆らい今は岩山で眠っていて、男の愛を求めて得た時にだけ目覚めるのだから、今のわしに彼女は役に立たない」と言う。「反抗することを教えた者が、反抗した者を罰するならば、私からは何も言うことはない」と詰(なじ)るエルダに、ヴォータンは「自分は我々神々の滅亡をむしろ望んでいるのだ」と話し始める。「今1人の若者が、わしの力を借りずに黄金の指輪を手に入れ、ブリュンヒルデを目覚めさせるために向かっている。彼は怖れを知らず野望もないので、アルベリヒの呪いも通用しない。神々はその若者に世界を譲る。お前はまどろみの中で我々の最後を見届けよ」とエルダを眠りにつかせ、彼女は大地の中に消えてゆく。
第2場
岩山に近づいたジークフリートが、彼を待っていたさすらい人(ヴォータン)と出会う。ジークフリートは、実はヴォータン自身が地上の人間の女性に産ませた娘ジークリンデの息子なので、ヴォータンにとっては孫だが、ジークフリートはさすらい人が祖父であることは知らず、道案内をした小鳥がいなくなったので、出会った彼に炎の岩山への道を尋ねる。しかしさすらい人は、逆にジークフリートに多くの質問をする。誰がその岩山を探せと言ったのだ?「小鳥だ」、何故お前は小鳥の言葉が解るのだ?「大蛇の血を舐めてしまったら解るようになったのだ」、大蛇を殺せる剣を誰が造ったのか?「自分で造り直したのだ」、直す前の剣の破片の元の剣は誰が造ったのか?「そんなことは知らないが、知っていることは破片では役に立たないということだ」さすらい人は満足して笑うが、ジークフリートは、道を教えずに行く手を阻むさすらい人に苛立つ。さすらい人は「小鳥がいなくなったのは、カラスの主人であるわしがここにいるから逃げたのだ。そして炎の岩山に眠る乙女はわしが眠らせているのだ。もしお前が炎を恐れないのならば、わしのこの槍がお前の行く手を阻む。この槍はかつてその剣を砕いたのだから」と言う。ジークフリートは「お前が父の仇だったのか」と、かつては≪銘剣ノートゥング≫を砕いたその槍を、彼が鍛え直した剣で二つに叩き折る。雷鳴がとどろき、さすらい人は「では行け。わしにはお前を止めることはできない」と折れた槍を持って姿を消し、ジークフリートはこの出来事を気にもかけず、炎の岩山に進んでゆく。
第3場
ジークフリートが炎をものともせずに進むと、炎はだんだん衰え青空が開けて1頭の馬と1人の戦士(ブリュンヒルデ)が眠っている姿が見えてくる。ジークフリートは武装をしているので始めは男だと思うが、兜を取ると長い巻き毛が現れ、その美しい顔をまじまじと見つめる。鎧を外すと豊かな乳房が現れるので彼は「これは男ではない」と叫び、同時に何とも言えぬ不安から「怖れ」というものを知る。初めての「怖れ」に戸惑うジークフリートは、怖れを克服する方法はこの乙女が教えてくれるだろうと「目覚めよ、聖なる乙女よ」と叫ぶが、彼女は目覚めず、今度は「君の命を吸い上げよう」と長い接吻をする。ブリュンヒルデ(ソプラノ)が目覚めて2人は見つめ合い、彼女は、まずアリア«太陽に祝福を»で新世界へ挨拶する。ブリュンヒルデが「私を起こした英雄はどなた?」と尋ね、「炎を超えてきたのはジークフリートです」と答えると、彼女は感激して「私は貴方が生まれる前から愛していた」と言う。「では貴女が私のお母さんなのか」と聞くジークフリートに、「あなたの母親はもうこの世にはいない。私はヴォータンの深い気持ちを知り、全ての知恵を合わせて貴方を愛するために眠って待っていたのだ」と答える。感極まった彼が彼女を抱きしめようとし、ブリュンヒルデは最初驚いて「神聖なこの身が」と抵抗し逃げるが、ジークフリートが落ち着いて「私の妻になってください」と静かに近づくと、恥ずかしさのため両手で顔を隠すが愛は隠せず「ワルハラよさらば」と言って彼を抱きしめる。愛の歓喜の二重唱の中、幕となる。