馬小屋に設けられた見世物屋台。ペドロ親方（テノール）が前口上を述べ、客が入ってくる。ドン･キホーテ（バリトン）とその従者が現れると、ペドロ親方は彼に最上席を勧め、口上言いの少年（ボーイ･ソプラノ）が「これから始まる人形芝居は、フランスの年代記に基づくもので、ドン･ガイフェロスがモーロ人の魔の手から、奥方を救い出すお話です」と口上を述べる。

シャルルマーニュ皇帝の宮廷で、ドン･ガイフェロスはすごろく遊びに夢中で、モーロ人に捕らわれている妻メリセンドラのことなど眼中にはない。メリセンドラの父親代わりの皇帝は「自分の妻を助け出せないようでは、騎士ではない」と叱り、憤慨（ふんがい）したガイフェロスは、名剣を借りてきて妻の救出に出発する。

捕らわれのメリセンドラが、バルコニーから祖国フランスを思っていると、彼女に横恋慕しているモーロ人にいきなりキスをされた彼女は叫び声を上げる。それを見ていたマルシリオ王は、すぐにその男を捕らえて「モーロ人の間では、証拠調べなどせず、即刻に処罰するのだ」と述べると、突然客席からドン･キホーテが立ち上がり「真実を探るには絶対に証拠が必要だ」と叫び出す。慌てたペドロ親方が、口上言いの少年に耳打ちし、皆の注意を人形芝居に向けさせる。

ドン･ガイフェロスは、ようやく妻の捕らわれている町にたどり着く。メリセンドラは、マントで顔を隠しているドン・ガイフェロスに、夫とは知らず「フランスに行かれるなら、ドン･ガイフェロスのことを尋ねて」と頼むが、それが夫だと分かり、喜んでガイフェロスと一緒に逃げて行く。

「メリセンドラの逃亡に気付いたマルシリオ王は、鐘を鳴らして･･･」と口上語りが述べると、再びドン･キホーテが立ち上がり「モーロ人は鐘など使わない」と怒り出し、「もっとでたらめな芝居もあって、それがまた世間では受けているのですから」とペドロ親方になだめられて納得する。芝居が続行し、兵士たちが逃げる2人を追いかけ始めると、ドン･キホーテは、自分も剣を抜いて兵士を止めようと人形相手に大暴れして、ほとんどの人形を壊してしまう。財産の人形を壊されてしまったペドロ親方は「止めてください」と懇願するが、ドン･キホーテは戦い終えて、ガイフェロスやメリセンドラの人形に向かって名のりを上げる。

やっと我に返ったドン･キホーテは、あきれ果てている客たちに向かって、騎士がどれほど世の中に役立っているかを述べ、人形を壊されてしまったペドロ親方を尻目に、いつまでも気炎を上げて幕となる。