舞台：中世スペインのモンサルヴァトール城 (聖杯城) とその周辺の森。
第1幕
第1場
天上の使者から、キリストが最後の晩餐で使った聖杯と、彼が十字架上で傷を受けた聖槍を授けられた聖杯城 (グラール城)。その城の老騎士グルネマンツ (バス) と供の者は、聖杯城の王アンフォルタス (バリトン)が、湖で水浴びをしにくるのを待っている。そこへクンドリー (ソプラノ) が、アンフォルタス王の傷のための薬を届ける。彼女は目が覚めているときは忠実な城の使者だが、魔法使いクリングゾールに眠らされると、その手先になって騎士たちを誘惑する女である。輿 (こし) に乗って到着したアンフォルタス王は、グルネマンツからその薬を受け取り、「傷を治すには、神のお告げにあったように“同情によって智を得る無垢な愚か者”を待つしかないのだ」と呟き、湖に入っていく。グルネマンツは、供の者たちにせがまれて、城で起こった過去の出来事を次のように語りだす。「先王ティトゥレルは、聖杯と聖槍を心清い騎士たちと守っていたが、老いのために王位を息子のアンフォルタスに譲った。クリングゾールという魔法使いは、聖杯城の騎士になりたがったが、先王ティトゥレルが、その心が邪悪なのを見破って拒絶したために恨みを持ち、魔術を使ってなまめかしい美女を出現させて、騎士たちを誘惑して破滅させている。アンフォルタス王も、クリングゾールを討ちに行って、美女に誘惑され、そのすきに聖槍を奪われた上に、その槍で傷を受けた。王は今もその傷が治らずに贖罪 (しょくざい) に苦しんでいるが、ある日聖杯が輝いて“同情によって智を得る無垢な愚か者を待て”と神託が下ったのだ」。グルネマンツが語り終わると、神聖なる白鳥が矢を受けて落ちてくる。捕らえられた若者が、矢を放ったことを白状し、グルネマンツに非を諭 (さと) されて反省する。この若者の名はパルシファル（テノール）というが、彼は自分の名も両親のことも思い出せない。クンドリーが「父親は戦死して、母が1人で彼を育てたが、彼が母親の元を去った後死んでしまった」というので、パルシファルは彼女の首を絞めようとするが、グルネマンツが引き離す。グルネマンツは、この若者こそ神託に言われた愚か者かもしれないと考え、聖杯の儀式を彼に見せるために城へ連れていく。

第2場　
聖杯城では父王ティトゥレル (バス) が聖杯の儀式を始めることを命ずる。アンフォルタス王は、聖杯を仰げば死ぬことができないために拒むが、命令に従って聖杯を振り、痛む傷をかばいながら去る。パルシファルは王の苦しみに同情するが、意味を理解することはできず、それに失望したグルネマンツは彼を城から追い出す。

第2幕
パルシファルが、魔法使いクリングゾール（バス）の魔法の城にやってくる。クリングゾールは､彼を誘惑するようにクンドリーに命じて、美しい花園と美女たちを出現させるが、パルシファルは興味を持たない。しかし、クンドリーが「パルシファル待って」と言うと、母が昔、彼をそう呼んだことを思い出す。クンドリーが情熱を込めて母親のことを語るにつれ、彼は母への愛情を思い出して、母の元を去ったことを後悔する。クンドリーが口づけすると、パルシファルは突然、罪やその苦悩が何であるかという智を得て、アンフォルタス王の苦しみを思い出す。自分の使命を理解したパルシファルは、クンドリーの誘惑を退け、アンフォルタス王の所へ行く道を問いただす。クンドリーがクリングゾールに助けを求めると、クリングゾールはパルシファルに聖槍を投げつけるが、聖槍はパルシファルの頭上で止まってしまい、パルシファルがその槍を取って十字に振ると、誘惑の魔法も消え去る。

第3幕
第1場
数年後、森で隠者のように暮らしているグルネマンツは、倒れているクンドリーを見つけて助けてやる。彼女は悔い改めてクリングゾールの元から逃れてきたのだ。そこへ甲冑に身を固めた騎士がやって来るので、グルネマンツは「今日は聖金曜日なのだから武器を置くように」と言い、騎士が兜（かぶと）を取ると、現れたのはパルシファル。グルネマンツは、聖槍を取り戻した彼との再会に感激し、アンフォルタス王が死を願って聖杯の儀式をしないために、父王ティトゥレルが死に、騎士たちも力を失っていると話す。クンドリーがパルシファルの足を泉水で清め、グルネマンツは彼に洗礼を施し祝福する。クンドリーがパルシファルの足に香油を塗って髪でぬぐうと、パルシファルは王として迎えられるように、頭にも香油を塗るようグルネマンツに頼む。パルシファルが、クンドリーの頭に泉水を注いで洗礼を授けると、彼女は生まれて初めて泣くということを知り、グルネマンツが「これが聖金曜日の奇跡だ」と言い、3人はティトゥレル王の葬儀へと向かう。

第2場
先王ティトゥレルの葬儀を執り行おうとする病床のアンフォルタス王は、もし聖杯を拝んだならば苦痛を抱えたまま生き続けなければならず、絶望的に「我にも死を」と叫ぶ。そのとき、聖杯騎士のマントを着たパルシファルが進み出て、「傷をつけた槍だけがその傷をふさぐことができるのだ」と言い、聖槍を王の傷口に当てると傷は消えてしまい、人々は奇跡に感動する。パルシファルが聖杯の儀を行い、クンドリーは静かに息を引き取って神から救済を与えられ、パルシファルが皆に祝福を与えて幕となる。