冬至もとうに過ぎて少しずつ日脚が伸びてきているはずですが、春はもう少し先、復活祭が待ち遠しいところ。昼間の短い季節には、太陽の光が本当にありがたく感じられます。実際、太陽光は人間、動物の体にかなり影響を及ぼしているものなのです。

　　体内時計と太陽光
　成長期の子供にとって、紫外線はビタミンDを形成し、骨や細胞の成長を助けるもの。大人、特に女性にとっては日焼けは大敵、紫外線はお肌に有害、と敬遠されがちです。しかし、成長期でなくても、太陽光線は細胞を活性化し、免疫力を高めてくれる大切なものでもあります。
　そして、太陽光は体内時計とも深い関わりがあります。人間の体内時計は25時間（概ね1日という意味で「概日」と呼ばれます）でセットされているそうです。全く光が届かない所で生活すると25時間周期で生活するようになるそうですが、普通に生活すれば1日の長さは実際には24時間。したがって1時間分リセットする必要があります。これにはメラトニンというホルモンが関係しています。このメラトニンは、眠りにつく2〜3時間前から翌朝起きるころまで分泌され、視神経からの光の刺激によって分泌が抑制されます。そして睡眠と覚醒のリズムを調整しているのです。冬の朝、特に日本と比べて日の出が遅いベルギーでは、なかなか起きられないというのにも納得できるような気がします。（そうでなくても、寒い時期は布団が恋しいものではありますが。）朝、快適に起床するのは、光の刺激がポイントだということで、目覚まし時計ならぬ目覚ましライトというものがあります。商品名は「Bodyclock」(英国製。ウェブサイト参照)。起床時間に合せてスイッチオンになり、だんだん光が強くなるライトです。
　最近の研究では、光を感知するのは目だけではないことがわかっています。米・コーネル大学の研究グループによると、膝の裏も光を感知して、血液によって情報が脳内に伝わりメラトニンの分泌を調整しているそうです。実際に、膝の裏に光を当てると、かなり短時間で時差ぼけが解消するという話もあります。

　太陽光は健康のもと
　日照時間が短い秋、冬は、気分がふさぎこんでうつ状態に陥りやすく、天気の悪い日もなんとなく憂うつになってしまうのも、どうやら太陽光が不足していることが原因のひとつのようです。光の刺激が充分でなく、体がうまく覚醒しないせいなのです。
　うつ状態はひどくなるとうつ病にまで進んでしまいますが、このうつ病の治療に光療法（ライトセラピー）が用いられることがあります。日本でも既に病院や高齢者福祉施設でも取り入れられているそうです。これには体にとって大切な近紫外線や遠赤外線が必要で、太陽光のような幅広い波長でないといけません。例えば蛍光灯ではどうかというと、波長が狭く、どんなに明るくても体内のリズムを整えることはできません。それどころか長時間蛍光灯の光に当たることで、イライラが増し、ストレスが起ってしまうのだとか。
　では日照時間が不足しがちな環境にいる私たちはどうすればいいのでしょう？　例えば、波長の幅が広い、自然光に近い照明器具が商品として出ています。先程紹介した目覚ましライトと同じメーカーの「brightspark」や、米国製の「TRUE-LITE」などです。。動植物の成長に欠かせない中近紫外線が太陽光と同じ割合で出ているのがうたい文句。メラトニンなどのホルモンバランスに効果的で、人間だけでなく、爬虫類など室内で飼うペットの健康増進用にも利用されているようです。また、日光を嫌うゴキブリの駆除や、病原菌も紫外線効果で減らせるそうです。
　こういう便利なものを利用するのも手ですが、その前に、太陽が出ている時には、ほどほどに日光浴をし（日焼けのし過ぎにはお肌のためにも注意しなくては…）、なんといっても規則正しい生活をすることが一番です。簡単で効果的、かつ実践するのに最も難しい健康法ともいえるかもしれませんが…。