1月の古い呼び方でよく知られているのは睦月。「親しみ睦み合う」という意味ですが、他に元月、初春月、太郎月、などの呼び方もあります。英語ではJanuary、仏語ではJanvier、蘭語ではJanuariですが、綴りと発音は多少違うものの、語源は同じものです。1年の始まりに、始まりについてのお話を。

★神様の名前が由来
　1月Januaryはローマ神話に出てくるヤヌスJanus神からきています。ラテン語でJanuaは戸口という意味ですが、この名から由来する通りヤヌスは門や戸口の守護神。ローマの神々の中でも最古の神様です。前後を見る二つの顔を持ち、一つは若く、未来を見、もう一つは老いていて過去を見ていると言われています。　
　ちなみに、蘭語で1月は古い名前でLouwmaandと呼ばれます。

★年の始まりは1月1日じゃなかった？
　ヤヌス神のイメージの通り、1月は古い年と新しい年の両方に面していると言いたいところなのですが、実はかつて1月は1年の始まりの月ではなかったのです。
　紀元前8世紀、古代ローマ初代王ロムルスの時代には1月、そして2月がなかったそうです。1年は10か月、304日で、春分の日にいちばん近い新月の日から1年が始まることになっていました。冬の約2か月間は寒くて活動できないことを理由に、日にちを数えずに春を待っていたのです。
　このままだと当然のことながら、太陽の運行と暦の間にだんだんズレが生じてきます。そこで、紀元前8世紀の終わり頃、ローマのヌマ王の時代に、1月（ラテン語でJanuarius）、2月（ラテン語でFebruarius）が付け加えられたのです。ただし、年の初めにではなく、11番目と12番目に加えました。そして1年は355日となりました。
　しかし、これでも暦のズレは解消されませんでした。紀元前45年、ジュリアス・シーザーがアレクサンドリアの天文学者の意見を取り入れ、改暦を行いました。これがユリウス暦です。この時、年の始めの月を冬至の次の月、つまりJanuariusとしました。

★暦で違う年の始まり
　中世キリスト教世界では、年の始まりがいろいろありました。3月1日、2月28日（29日）、1月1日、12月31日、3月25日、3月24日、イースター前の土曜日、イースター前の金曜日、12月25日、12月24日などです。ビザンチン帝国では9月1日が始まりの日で、しかもキリストの誕生を紀元とせず、世界が誕生したとされる紀元前5509年を0年としていました。1600年頃までには、ヨーロッパのほとんどの国で1月1日を最初の日としており、イタリア、イギリスではやや遅く1750年頃から公式に採用し始めました。
　ユリウス暦のあと、1年周期の誤差が非常に少なく精度の高いグレオリオ暦ができ（1582年）、これが現在の暦の主流となっていますが、独自の暦を利用している国もあります。季節の周期を考慮して調整をしないものでは、毎年、日付けが変わります。いくつかの暦の2004年の新年はこうなっています。

○中国・春節：2月20日　太陽太陰暦で、日本も飛鳥時代から使用していました。日本の旧正月でもあります。ちなみに、日本は1872年にユリウス暦、1900年にグレオリオ暦を採用し、現在に至っています。
○イスラム暦新年（1425年）：2月22 日　月の満ち欠けを基準とした太陰暦。季節の周期を考慮せず調整しないの
　で、毎年10日ほど新年の始まりが早くなります。断食や巡礼の行事は、この暦にしたがいます。
○インド国定暦新年（1926年）：3月22日　暦があまりにもたくさんあり過ぎて混乱していたため、1957年、国で
　統一した暦を作成しました。
○イスラエルのユダヤ暦新年（5765年）：9月16日