「アールデコ」は1925年、パリで開催された装飾美術（アールデコ）エキスポﾟを機に確立し、新大陸に渡って大きく開花した、第一次大戦後の建築装飾様式として有名です。この様式の前身は1900年に最盛期を迎えていた「アールヌーボー」。これはベルエポック(Belle Epoque，1880年〜1914年)を代表する様式でした。アールヌーボーを特に好んだのは当時の中産資本家階級、俗にbourgeoisie(ブルジョワジー)と呼ばれる人々です。彼らは自分の富をできる限り豪華に見せようと、きらびやかな装飾のあるこの様式を流行させたのです。

　ところが第一次世界大戦が終わると、戦争の暗いイメージを払拭して明るく新しい世界を望む気運が一気に高まりました。戦前世界の様式であったアールヌーボーはすたれ、ファッションも変わりました。ベルエポックの厚い服の代わりに戦後の衣装は軽くて短くなりました。これは日本では「モボ・モガの時代」として良く知られています。
この、新しい時代の風に乗って建築家逹もオリジナル様式を模索し、そこから生まれたのがアールデコだったというわけです。

　ブリュッセルにはアールデコの建築物がたくさん見られます。毎年9月に開催される文化遺産一般公開日（Journees du Patrimoine) には、普段一般に公開されていないような建築物も含め、多くの建物を見学することができます。

　ユックルの「Musee David et Alice Van Buuren」はVan Buuren夫妻の屋敷がそのままﾐｭｰｼﾞｱﾑとして一般に公開されているものです。1928年に建てられたこの屋敷は煉瓦つくりのオランダ風純アールデコの好例です。オランダ人の資本家David Van Buurenは美術を大変愛し、当時の画家、Gustave Van De Woestijneと親交を深めていました。このﾐｭｰｼﾞｱﾑにはVan De Voestijneの作品が32点も集められています。屋敷は非常に美しく、随所にアールデコ様式がちりばめられています。また室内の家具は紫檀など、高価な素材のものが多く見られます。
一階の食堂、客間、居間、二階の書斎とアトリエが公開されていますが、その他に庭園も忘れてはなりません。この屋敷は手入れの行き届いた素晴らしい眺めの庭に囲まれています。1500本のイチイの木や、1968年に作られた全長約500ﾒｰﾄﾙの生け垣迷路は見ものです。

所在地： avenue Leo Errera n° 41, 1180 Uccle
電話：　 02 343 48 51
開館：　 月〜金の午後14時〜17 :30 (庭園は18 :30まで)　
入館料： ﾐｭｰｼﾞｱﾑとエクスポ10Euro, エクスポのみ7Euro
ウエブサイト：www.museumvanbuuren.com