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銅像めぐり~5~
アルベール一世 Albert Ⅰ 第3代国王、アルベール一世ほど、国民から絶大な支持を得た王様はいないでしょう。即位5年後に第一次世界大戦が勃発。中立国のベルギーは、ドイツ軍にリエージュ、ブリュッセルを次々と占領されます。この時、国王は総司令官としてフランス国境の町、フェルヌ近郊で敗残兵とともにエイゼル川に沿って防衛線を築き、ドイツ軍と徹底抗戦。最後まで中立の立場を主張し、最終的に国土の奪回に成功します。戦場での国王は質素な軍服を着、兵士とともに塹壕にも入り、自ら銃を手にしたといいます。そこには、妻であるドイツ出身の王妃、エリザベートの姿もありました。国際音楽コンクールに今も名を残す王妃は、戦場に程近い病院で、負傷兵の世話に明け暮れました。国王夫妻のこうした行動は、当時、ヨーロッパだけでなく日本でも多くの人々の感動を呼び、ベルギー国民を励ますための募金活動が行われたほどでした。 国王は戦後、国の復興に尽力するとともに、普通選挙を実現させ、科学研究国家基金を創設するなど多くの改革をし、
“名君”と評されました。一方、登山家でもあり、行動派の彼は、自ら飛行機を操縦しては周囲をやきもきさせていたそうです。 この経緯については、今年ベルギーで出版された「殺された国王」(Le
Roi tue)という本に書かれ話題になりました。著者のフリーランス記者、ジャック・ノテルマン氏(Jacques Noterman)によると、遭難の記録の中で、事実が改ざんされていたり、死亡時の状況に不自然な点が多かったというのです。ノテルマン氏は「王の死を再調査するため、議会は調査委員会を作るべきだ」と主張しています。死後70年を経た今も人々の心に残る国王に会いたい方は、セントラル駅近く、王立ベルギー図書館横の広場に行ってみましょう。スケートボードを抱えた若者たちが集うこの場所で、馬上の凛とした姿を見ることができます。
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