銅像めぐり〜７〜
ガブリエル・プティ　Ｇａｂｒｉｅｌｌｅ　Ｐｅｔｉｔ
第１次大戦中のレジスタンス、スパイ
（１８９３〜１９１６）

　銅像めぐりの連載で、初めて女性の登場です。
ガブリエル・プティ。第１次世界　大戦中、女性スパイとして、また、ドイツ軍に占領されていたベルギーで、レジスタンス（地下組織・運動）の協力者として活躍した人です。

　プティは、ベルギー・トゥルネー（Ｔｏｕｒｎａｉ）の、質素な一般家庭に生まれました。母親の死後、彼女はカトリックの寄宿学校に入ります。
１９１４年、２１歳のときにブリュッセルに出、働きはじめます。第１次世界大戦がぼっ発するとすぐ、プティはベルギー赤十字で医療奉仕の仕事に就きました。　彼女には当時、フィアンセのモーリス・ゴベールがいました。１９歳の時に知り合った彼は、職業軍人でしたが、前線で負傷しドイツ軍の捕虜となってしまいます。が、彼は脱走して両親のもとで傷を癒し、再度ベルギー軍に加わるためにドイツ国境に向かいます。

　一方プティは、イギリス政府に密かに雇われ、スパイとしての教育を受けます。彼女は短期間の研修のあと、イギリス政府の秘密情報部に入り、すぐに熟練のスパイ同様、活動できるまでになったといいます。ドイツ軍の動きをイギリスに伝達するかたわら、ベルギー国内のレジスタンスの協力者として、地下新聞「Ｌａ　Ｌｉｂｒｅ　Ｂｅｌｇｉｑｕｅ」の配布や、「Ｍｏｔ　ｄｕ　Ｓｏｌｄａｔ」という秘密郵便事業などにも関わっていました。果敢に戦うフィアンセの境遇が、彼女の気持ちをレジスタンス運動に駆り立てたのかもしれません。

　１９１６年２月、プティは密告によって、ドイツ側に捕らえられ、３月には死刑を宣告されます。このとき、ドイツ側からは「協力者の名を挙げれば情状酌量する」と条件を出されますが、彼女は断固拒否。難攻不落の受刑者として、ブリュッセルのサン・ジル（Ｓｔ．Ｇｉｌｌｅｓ）刑務所で処刑の日を待つことになります。
４月１日、２３歳で銃殺刑になったプティの遺体は、そのまま、処刑場となったスカールベーク（Ｓｃｈａｅｒｂｅｅｋ=ブリュッセル北部）に埋葬されました。
彼女の名は、戦後になって広まります。殉教者、ヒロイン・・・。さまざまなエピソードとともに英雄として崇拝されるようになります。名誉ある称号やメダルを授与され、１９１９年５月には、国葬が営まれました。

　ブリュッセル市内、グラン・プラス近く「サン・ジャン（Ｐｌａｃｅ　Ｓａｉｎｔ　Ｊｅａｎ）広場」に彼女の銅像があります。その足元にはこんな言葉が刻まれています。

　「私は死刑を宣告され、明日、銃殺される。（ベルギー）国王万歳、ベルギー万歳。１人のベルギー女性が、死をどのように迎えるか、私は彼らに見せてやります・・・」。