シント・トルイデンの名前の由来は、フランク王国の地方のひとつであったHesbaniaの伯爵の息子、トルードTrudoです。彼はフランスのメッツMetzで聖職者の勉強を終え故郷に戻った後、修道院を建て、その周囲に聖職者のコミュニティーを作りました。657年のことです。またトルードは教育を授けてもらった感謝の気持ちとして、領土の半分をメッツに寄贈しました。そして残りの半分は修道院が領主権を持つことになりました。メッツは1227年にこの権利をリエージュLiegeの皇子司教（宗教的に司教であると同時に政治的には皇子（大公）でもある立場）に譲り、18世紀頃までシント・トルイデンはこの二つの権威の統治下に置かれたのです。693年、トルードは亡くなると同時に聖人になり、この時からシント・トルイデンは聖地となりました。そして修道院を中心として道路が発達し、次第に市場が立つ広場ができ、修道院の南へと町は拡大していきました。

　11世紀に入ると町には聖職者だけでなく商人も行き交うようになり、人口は増大、都市化に拍車がかかります。当時の修道院長Adelard2世が町の周囲に要塞を設けたことで、完全に町としての形態を持つに至りました。経済活動が活発になり、ビール醸造業や毛織物業などが発達し、商人たちは町の中におさまらず、フランスのロレーヌ地方、シャンパーニュ地方、ドイツ、イギリスにまで活動範囲を拡大していきました。そして1366年、商品の取引所ができました。現在の市庁舎の建物です。この時、同時に建てられたのが町の独立の象徴、鐘楼です。

　最初に建てられた鐘楼は1606年に崩れてしまいました。17mの高さのところまでは残ったのですが、市庁舎に組み込まれる形で再建され、今日に至っています。角の部分、窓枠の部分など所々に石を使用し、レンガと石を組み合わせたデザインが特徴的です。下方正面の壁に設置してある聖母子像は、16世紀に製作され市庁舎におさめられていた木像のコピーです。八角形の頂塔にカリヨンがあります。鐘は49個ですが、新しいものに取り替えられています。オリジナルの鐘はVon der Gheynによる製造で、鐘楼のわきに入り口がある観光案内所に展示されています。カリヨンは毎日15分おきに自動演奏されます。また毎土曜日11時から、地元の高校教師Noel Reynolesさんによる生演奏が行われています。

　12世紀にベルギーで創設された半俗修道会ベギン。シント・トルイデンにもベギン会修道院が残っています。でも他とちょっと違うのは、ベルギーでも有数のフレスコ画が保存されていること。実はこのフレスコ画の存在は長らく忘れ去られていたのです。修道院が建てられたのは1258年。敷地内の真ん中に教会の建設も同時に始まりました。フレスコ画は14?17世紀にかけて描かれましたが、なぜか白く塗りつぶされてしまい…。発見されたのは1860年。内部の改装をしようと壁を剥がしたら現れたという次第。画はマリアの生涯や聖人像をテーマに38あります。もうひとつ、パイプオルガンも必見。1664年、Huy出身のオルガン製造者が製作。パイプの円筒形が見事で当時の技術でこれほどのものを作るのは奇跡とでも言えるそう。