北海岸から約6km、フランス国境近くに位置するヴュルヌは、画家ポール・デルヴォー（1897-1994）が晩年を過ごした町。9世紀にヴァイキングの侵攻から守るための要塞の町として造られました。名前の語源は“furn”で、水路、運河を意味します。11世紀までこのあたりは海で、町は小さな島の小川沿いにあったようです。町が独立権を得たのは12世紀のこと。その頃には、ハンザ同盟に加盟し、経済的に重要な町として発達しました。しかしイギリスとの関係が悪化してからは、その繁栄にかげりが見え始め、16世紀末まで衰退の一途をたどります。また15〜16世紀には数々の戦争にまきこまれました。町が再び輝かしい繁栄を取り戻したのは17世紀以降、スペインによる統治時代です。聖ワルブルガ教会St.-Walburgakerk、聖ニコラ教会St.-Niklaaskerkなど、中世ゴシック様式建築も残っていますが、重要な歴史的建築物のほとんどは17世紀頃のもので、優雅なフランドル風ルネサンス様式です。


　 18世紀に入ると、ルイ14世の領土拡大、オーストリア継承戦争により、町は破壊され再び暗雲がたちこめます。フランス革命の時にも攻撃を受け、聖ニコラ修道院の閉鎖など修道院制度が廃止され、財産没収あるいは売却が行われました。被害を免れたのは聖ワルブルガ教会。人々がお金を集め財産を買い戻したのです。


　ワーテルローの戦いを経てネーデルランドへの統合後、町は復活の兆しを見せ始めます。1831年7月17日、ベルギー初代国王レオポルド1世（詳しい経歴はプチポワ05年4月号「銅像めぐり(8)」をご参照ください）がカレーからダンケルクを経てベルギーに入り、初めて訪れたのがヴュルヌでした。第一次世界大戦時には、市庁舎Stadhuisにベルギー軍の司令部が置かれたこともあります。様々な歴史を経て、現在は丘陵、干拓地、海岸線と豊かな風景に恵まれた美しい町の姿を見せてくれています。


　さて、鐘楼は裁判所として使われていた大邸宅Landhuisに取り付けられています。建物はルネッサンス様式で1613〜1621年に建設されましたが、鐘楼は1628年、後期ゴシック様式で建てられています。現在、鐘はすべて取り外されており、鐘楼に上ることもできません。美しい鐘の音を聴かせてくれるのは、1961年に聖ニコラ教会の塔に設置されたカリヨンです。オリジナルは中世に作られたのですが、フランス革命の時に略奪されてしまいました。略奪の際、フランス兵たちはひとつだけ鐘を残していきました。もっとも重い“t Bomtje”と呼ばれる鐘で、1379年Willem van Harelbekeによって作られました。鐘は時を告げるだけでなく、警鐘の役割も果しました。今では、毎日、毎時45分に自動演奏が行われています。7?8月の毎日曜日20時?21時には、カリヨン奏者Paul Bourgeoisさんによる生演奏が行われます。また、塔には6月15日〜9月15日の毎日10時から11時45分、14時から17時15分に上ることができます。

★ヴュルヌ豆知識★
　
お祭り／ざんげ者の行列Boetprocessie（発祥は1644年。毎年7月最終日曜に開催）酒／地ビールSlapersbier（＝Sleeper’s beer）、トラピストビールSt.-Sixtus’Abbey、ジンVeurnsche Witten　
食べ物／チーズ：Beauvoordeのチーズ（ハードタイプ）、Echte Loo（トラピストタイプ）、Rubens（クリームチーズ）、お菓子：Kletskoppen（アーモンドとヘーゼルナッツのビスケット）、Vlaaien（リンゴのケーキ）　
博物館／Bakkerijmuseum（ベーカリー博物館）：建物は18世紀後半に建てられた農家。昔のパン屋の様子、パン製造道具、世界のパンの展示など　住所：Albert �T-laan 2, 8630 Veurne　
開館：4、5、6、9月＝10時-11時、14時-17時、金曜休館、7、8月＝毎日10時-12時、14時-18時、 10月から3月＝10時-12時、14時-17時、金・土曜休館