ベルギーのホットトピック　11月
ベルギー刑務所事情

　最近、ロレット・オンケリンクス法務大臣が頻繁にメディアに登場する。話題は刑務所関連、しかも脱走や一時赦免中の失踪、条件付き赦免後の失踪など、物騒な話ばかりだ。　
７月、一時赦免されていた受刑者が赦免期間終了後に再出頭せず、警察が総力を挙げて捜査した末、発見、再収監された。収監中に6回も脱走をした悪名高い受刑者で、一体どうして彼が一時赦免の対象になったのか、と赦免システムを疑う声がにわかに高まった。同時期、一時赦免中に自国（北アフリカ）に逃げ帰ってしまい、再収監できずにいる受刑者もいる。
そして８月にフランドル地方・テルモンドの刑務所から28人が集団脱走を図った事件は即座に国中に知れ渡った。その後７人が発見、再収監されたが、残る21人は1０月現在も行方不明のままだ。
さらに各刑務所では、運動場に出た受刑者が収容房に戻るのを拒否する、というケースが後を絶たず、監視官を悩ませている。
そんな中、受刑者の人権保護を目的とする国際刑務所監視機構が９月に発表したリポートで、ベルギーの刑務所事情を設備、衛生面で「劣悪」と評し、オンケリンクス大臣は汚名を挽回する暇もない。

今年現在ベルギーの刑務所には9597人の受刑者が収監されている。これは人口10万人に対し９１人の割合で、ヨーロッパ25カ国の平均値は135人、エストニアの333人が最高で、スロベニアの59人が最低だ。日本は62人、世界最大の受刑者数を抱えるアメリカはなんと738人に達しているという。
国内には32の刑務所があり、収監可能人数は8311人、1割ほどの過剰収監となっているが、この数字は先進世界ではほぼ似たようなもので、日本でも5％の収監過多の状況だ。
驚くのはベルギーの受刑者のうちベルギー人は60％に過ぎないこと。残りの40％のうち半数近くが北アフリカ国籍、ついでヨーロッパ諸国籍で占められている。アジアでは中国人12名、韓国人1名、日本人の受刑者は現在ゼロとのこと。
先日、新任の刑務事務局長が、外国籍の受刑確定者を自国へ送還し、そこの刑務所で受刑させるようにしてはどうか、という提案を発表した。収監のアウトソーシングとでも言うべき画期的な案だが、選挙前の発言だったため、政治的効果を狙っただけの可能性もある。ちなみに、現在国外で受刑中の523人のベルギー人のうち、30％近くは麻薬関連でスペインに滞在中ということだ。
変わったところでは、2005年現在、電子チップつきブレスレットを装着して自宅に暮らす受刑者がベルギー全土に277人いる。このチップは自宅に取り付けた受信機と常時無線交信を行い、ブレスレットが電波の範囲外に出たり、受信機に違法行為があると監視センターに通報される仕組みになっている。もしかするとあなたの隣人も？！