1840 年ベルギー、トレメロ
（Tremelo、ルーヴェン近郊）で農
家の7 人兄弟の末っ子として生まれ
ます。本名はヨセフ・デ・ブーステ
ル（Jozef de Veuster）。
兄弟の影響を受けて、1859 年、
19 歳のとき自らもイエズス・マリ
アの聖心会に入会、司祭として一生
を神と人々に捧げることを誓います。
このとき選んだ修道名がダミアンで、
以降、ダミアンとよばれるようにな
りました。彼はルーヴェン・カト
リック大学で哲学と神学を学びまし
た。
1863 年 23 歳のとき、チフスで急
きょ派遣が中止となった兄に代わっ
て、宣教師としてハワイへ渡り、翌
年、ホノルルのカテドラルで叙階さ
れ司祭となります。
当時、不治の病であったハンセン
病の患者は、モロカイ島へ隔離され、
何の治療も施されず亡くなっていま
した。このことを憂慮したダミアン
神父はモロカイ島への常駐派遣を願
い、患者以外初めての入島者として
単身、島へ上陸しました。
1873 年 患者たちの生活を改善す
べく環境の整備に力を注ぎ、世論か
ら「モロカイの英雄」として注目さ
れるようになり、義えん金なども集
まりました。生活用水を整備し、学
校、病院施設を建設するなど、患者
の生活環境は徐々に変わりましたが、
唯一患者でないダミアン神父と患者
の間には、常に見えない壁が立ちは
だかっていました。
1884 年 ダミアン神父の苦労が実
りハンセン病患者の生活環境が改善
された矢先、神父はハンセン病を発
症します。長い間ハンセン病患者へ
の愛や労わりをこめて、「あなたた
ちハンセン病患者は･･･」という表
現をしていた神父の言葉が、このと
きから「我々ハンセン病患者
は･･･」と変わり、両者間の厚い壁
がなくなりました。
1886 年 この年は、ダミアン神父
の最後のホノルル渡航となりました。
これは、日本人漢方医の後藤昌直医
師の治療を受けるためでした。後藤
医師の漢方療法（大風子油を含む清
血練の処方、1 日3 回の温浴療法）
によって、ダミアン神父のハンセン
病は一旦軽快しました。ダミアン神
父は後藤医師に深い信頼を置き、
「私は欧米の医師をまったく信用し
ていない。後藤医師に治療してもら
いたいのだ」との言葉を残していま
す（Holy Man, New York : Harper &
Row, 1973）。
1889 年 その後症状が進行し、4 月
15 日、協力者の司祭やシスター、
患者たち、医師に見守られて49 歳
の生涯を閉じました。
彼はモロカイ島に葬られていました
が、1930 年代になってダミアン神
父を「ベルギーの英雄」として、帰
郷を求める世論がベルギーで高まっ
たため、1936 年に棺が掘り出され、
アメリカ海軍からベルギー海軍の手
を経て故郷ベルギーへ戻りました。
現在、ルーヴェンのSint-
Antoniuskapel に葬られています。